第26回タカシマヤ美術賞・団体助成決まる 青野文昭ら3氏および3団体が受賞

2016年01月26日 17:32 カテゴリ:最新のニュース

 

(左から)田辺小竹氏、藤笠砂都子氏、青野文昭氏、(株)髙島屋・木本茂社長

 

(株)髙島屋のメセナ活動として、有能な作家の発掘・支援と新鋭作家個人及び美術文化の発展に寄与した団体への助成を行う「公益信託タカシマヤ文化基金」(酒井忠康運営委員長)の贈呈式が1月25日(月)に開催。今回、個人に贈られる「タカシマヤ美術賞」は青野文昭氏(現代美術)、田辺小竹氏(竹工芸)、藤笠砂都子氏(陶芸)の3氏に決定した。同美術賞は同基金の推薦委員の推薦を参考に運営委員会で決定。1人200万円の助成が行われる。以下各氏の受賞コメント。

 

 

◇青野氏コメント

26回を数えるタカシマヤ美術賞ですが、今まで自分が尊敬してきた沢山の作家の方々が受賞されています。この度自分もここに加えていただけることになり、光栄かつ恐縮しているところです。90年代より修復・復元をテーマにして、拾ったものをなおすという「足りない部分を後付けしていく」ような仕事を今に至るまで続けてきています。物質性や造形作業から離れるのではなく、少し別な角度から関わる、もっと広い視野で創作活動を見直してみようというある種文明論的な危機感、問題意識があったのも事実です。

 

2011年東日本大震災を受けまして、色々なものが揺るがされる中で、ますますそうした真価が問われざるをえないような気がして励んできました。今回の受賞はこれまで自分がやってきた道筋を応援していただき、更に未来に向けて自分の背中を押してくれるような励ましをいただいたように感じています。これからも1作1作がんばっていきたいと思いますので、今後とも暖かく見守っていただければと思います。

 

 

青野文昭(あおの・ふみあき)…1968年宮城県生まれ、1992年宮城教育大学大学院美術教育科修了。2005年宮城県芸術選奨(彫刻)。2013年ヴァーモントスタジオセンターフェローシップ・滞在制作。家具の断片や、海岸の漂流物などを収集し、物が経てきた歴史などを尊重しながら「なおす」ことで新たな形態へと昇華させてきた。特に東日本大震災以降は、「あいちトリエンナーレ2013 揺れる大地」や「震災と表現」(リアスアーク美術館)などに参加し、震災とアートの関係性を追求する姿勢を見せている。パブリックコレクション=宮城県立美術館、愛知県立美術館、金沢21世紀美術館、リアスアーク美術館など。

 

 

◇田辺氏コメント

毎日竹をつくっているわけですが、苦しいことが多いです。自分自身、その中で登山をしているような思いでいるのですが、こういうふうに賞をいただけるのは頂上に登ったように何とも言えない気持ちになります。本当にありがとうございます。私自身はワクワクする作品をつくりたいという思いを志しています。常に自分自身がものを作ってワクワクしたいとか、見る方も展覧会を見ていただいてワクワクするような作品づくりを志したいなといつも思っております。

 

2週間後にフランスのギメ美術館で大きな竹のインスタレーションをつくる予定です。なるべき大きなものを作ろうとか、感動するものを作ろうとするとどうしても費用がかかったりと悩んでいたのですが、ちょうど助成の話をいただきまして、巡り合わせかなと感動しております。

 

 

田辺小竹(たなべ・しょうちく)…1973年大阪府生まれ。三代田辺竹雲斎の次男。1999年東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。高い技術と現代的な表現力で2013年には円空賞を受賞。国内のみならずアメリカ、フランス、ドイツなどで個展・グループ展を開催してきた。今後はフランスのギメ美術館で大規模インスタレーションを展示する。パブリックコレクション=フィラデルフィア美術館、ボストン美術館、大英博物館、宮内庁、ビクトリア&アルバート美術館、岐阜県美術館など。

 

 

◇藤笠氏コメント

子どもの頃に美術館で作品を見ることが多くて、そういうものを見ながら育った影響で、何か自分でもものを作りたいと思うようになって、作家を志しました。そして大学で陶芸に出会いました。陶芸というものは近年、器から造形的なものまでかなり表現の幅が広がってきているように感じています。「陶芸」だとか「やきもの」という言葉を聞いたときに、一般的に頭に思い浮かべるようなものから範囲が超えたようなものが多く見受けられるようになっていきています。私自身の作品もそうではないかなと思っております。

 

言葉の持つイメージを超えたものが生み出される時代に、自分が何をつくるのかと考えた時に、陶芸という素材と技術の領域、そして芸術という表現の領域が交わって、均衡を保ちながら作品に共存するような新たな造形を生み出すのはどうなのだろうかと考えて今に至ります。私の作品は手びねりという粘土の紐を淡々と積み上げて形をつくっていくという、縄文時代からある非常に原始的な技法です。世の中が発展していく中で、あえて原点に戻って、その本質を突き詰めるということが進化に繋がるのではないかと制作に取り組んできました。今回の受賞で安心感と励ましをいただいたような気持ちでいます。

 

 

藤笠砂都子(ふじかさ・さとこ)…1980年山口県生まれ。2007年東京藝術大学大学院工芸科陶芸専攻修了。日本橋三越本店での個展や、第19回MOA岡田茂吉賞展、アートフェア東京2014などに参加。粘土の可塑性によってしか表現できない世界を築き、動的で有機的な作品を手掛けてきた。パブリックコレクション=茨城県陶芸美術館、山口県立萩美術館・浦上記念館、シンシナティ美術館、メトロポリタン美術館など。

 

 

また「タカシマヤ団体助成」は公益財団法人せたがや文化財団(世田谷美術館)、公益財団法人東京都歴史文化財団東京都写真美術館、町田市立国際版画美術館の3団体に決定。助成内容はそれぞれ世田谷美術館が2016年7月2日から開催される写真家マヌエル・アルバレス・ブラボ(1902~2002)の日本初の体系的回顧展およびシンポジウム、東京都写真美術館が開館20周年を記念としたアピチャッポン・ウィーラセタクンの映像展、町田市立国際版画美術館が版画家で版画史研究科の故・小野忠重から寄贈された文献・作品の整理と公表、となっている。

 

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