宇都宮美術館で「とびたつとき 池田満寿夫とデモクラートの作家」が開催中

2023年05月24日 17:05 カテゴリ:最新のニュース

 

池田満寿夫《愛の瞬間》1966年 広島市現代美術館

池田満寿夫《愛の瞬間》1966年 広島市現代美術館

 

宇都宮美術館では2本の企画展を同時開催している。まず「とびたつとき 池田満寿夫とデモクラートの作家たち」展について紹介する。

 

版画家として、またメディアの寵児として一世を風靡した池田満寿夫が世を去って四半世紀となる。本展は、池田が世界へ飛びたった青春時代を、デモクラート美術家協会の作家たちとの交流を軸に紹介する展覧会である。

 

デモクラートは、1951年に瑛九を中心に既存の制度への反旗を掲げて設立され、大阪と東京を拠点に活動するグループだった。彼らは多くの人に見てもらえる版画の制作に力を入れ、版表現の可能性を模索していく。池田満寿夫は1955年頃から靉嘔を介して瑛九らの活動に加わり、銅版画制作を始める。本展は5章構成で、池田と泉茂や吉原英雄らデモクラートの作家たちとの出会い、起点となった瑛九の創作活動、1957年の劇的なグループ解散、作家たちの模索と飛躍のすがたを紹介し、最終章では1966年に池田がヴェネチア・ビエンナーレで版画部門国際大賞を受賞し、さらに新たな表現に踏み出していく予兆までを追いかける。

 

左:瑛九《旅人》1957年 和歌山県立近代美術館 右:泉茂《闘鶏》1957年 和歌山県立近代美術館

左:瑛九《旅人》1957年 和歌山県立近代美術館
右:泉茂《闘鶏》1957年 和歌山県立近代美術館

 

本展を通して、初期のシュルレアリスム風の油彩のほか、池田の金看板となった色彩銅版画、将来の展開を予想させるリトグラフと、若き日の池田の変遷を見ることができる。また、デモクラートの解散後にパリやニューヨークへ拠点を移し、それぞれの道を見出していった仲間たちの作品も見逃せない。

 

左:池田満寿夫《タエコの朝食》1963年 広島市現代美術館 右:池田満寿夫《聖なる手1》1965年 広島市現代美術館

左:池田満寿夫《タエコの朝食》1963年 広島市現代美術館
右:池田満寿夫《聖なる手1》1965年 広島市現代美術館

 

 

 

 

もう1本の展覧会は、「第15回宇都宮エスペール賞 藤原彩人 像化-構造を施す捻り物-」である。宇都宮エスペール賞は、宇都宮市に在住しているか、活動拠点がある等、同市にゆかりのある芸術家のうち、芸術の創造活動が顕著で、今後の活躍が期待できる方1名に贈るもので、賞の授与により、展覧会を開催するなど受賞者を支援・育成することで、芸術文化の振興を図ることを目的とする。

 

《像化/台化―軸と周囲―06.07.08.09》2022年 施釉陶 インクルーシブ・サイト-陶表現の現在-千葉市美術館さや堂ホールでの展示風景 撮影 柳場大

《像化/台化―軸と周囲―06.07.08.09》2022年 施釉陶
インクルーシブ・サイト-陶表現の現在-千葉市美術館さや堂ホールでの展示風景
撮影 柳場大

 

本展は、第15回受賞者の藤原彩人の個展である。益子育ちの藤原は、陶彫刻で現代の人体像の可能性を探求してきた。本展は、代表な連作《像化/台化-軸と周囲-》、ドローイング250点、手びねりの小品504点、新作などで構成される。土、火、水、空気と対話して生まれた作品群からは、作家が語る「土と水の調和からなる粘土は、その水分と円滑に離別させて、火(燃焼)のエネルギーによって石化する。それは恒久的な物質でもあるが、やがて土を作る助力となる。」という言葉通り、人をも含むあらゆる物が循環する世界観が体感できる。

 

(学芸課長 伊藤伸子/主任学芸員 小堀修司)

左:《立像2014B 01,03》2014年 H130xW35xD25㎝ 施釉陶 撮影:進藤剛 右:《図・像化―雨の行方― 》2019年 H225×W172xD20㎝ 施釉陶、トタン板 撮影:加藤健

左:《立像2014B 01,03》2014年 H130xW35xD25㎝ 施釉陶 撮影:進藤剛
右:《図・像化―雨の行方― 》2019年 H225×W172xD20㎝ 施釉陶、トタン板 撮影:加藤健

 

 

【展覧会】とびたつとき 池田満寿夫とデモクラートの作家/第15回宇都宮エスペール賞―藤原彩人展―

【会期】2023年4月30日(日)~6月18日(日)

【会場】宇都宮美術館(栃木県宇都宮市長岡町1077)

【TEL】028-643-0100

【休館】月曜、5月29日、6月5日・12日

【料金】一般1000円

【時間】9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)

【関連リンク】宇都宮美術館

 


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