【受賞】第25回タカシマヤ美術賞・団体助成決まる 池田学、小沢剛ら3氏が受賞

2015年01月21日 13:23 カテゴリ:最新のニュース

 

第25回タカシマヤ美術賞・団体助成決まる

 

(左から)笹井史恵氏、小沢剛氏、池田学氏、髙島屋社長・木本茂氏

 

有能な作家の発掘・支援と豊かな芸術文化の創造を目指し、新鋭作家個人及び美術文化の発展に寄与した団体への助成を行う「公益信託タカシマヤ文化基金」(酒井忠康運営委員長)の贈呈式が1月19日(月)にパレスホテル東京で開催された。今回、個人に贈られる「タカシマヤ美術賞」は池田学氏(絵画)、小沢剛氏(現代美術)、笹井史恵氏(漆芸)の3氏が受賞。また団体助成は川崎市岡本太郎美術館の「(仮称)竹田鎮三郎とメキシコ現代美術」展と公益財団法人長崎ミュージアムの「ジュリオ・ゴンザレス」展に対して贈られた。

 

 

◇池田学氏コメント

「大学生のころ、柏の髙島屋で4年間、ディスプレイ設置の仕事をしていたので、その髙島屋からこういう賞を貰えて、特別な気持ちがします。今、アメリカで3年かけて1つの大きな作品を制作をしています。1年半が過ぎ、残りの1年半は追い込みで中々帰国できないのかなと思っていたので、(今回の受賞は)ご褒美を貰ったようでとても嬉しく思います。

 

アメリカは言葉も不自由で、全く新しい環境で自分たちだけで生活していくのはとても大変です。でも美術館の館長やボランティアスタッフの方々、友人たちが自分の作品を見て、繋がり、そして助けてくれている。自分が描いている絵が縁を呼んで、たくさんの人をつなげている。絵が自分を導いてくれているような気がして、絵を描いていて本当に良かったと思います。

 

アメリカでは1日の半分以上、独りで過ごします。1日1時間だけスタジオを公開しています。市民の方や学生の反応を直にもらって、僕もその反応に応える。それが自分の作品の大きな原動力にもなります。ただ、たった独りでほとんどの時間を美術館の地下で過ごしています。独りというのは作品を作るうえではすごく集中できるし、深く掘り下げる貴重な時間でもありますが、逆に言うと悪いことや不安も同じようにフォーカスしてしまう。これが日本だったら同僚や仲間がいてリフレッシュできますが、アメリカではそうはいきません。ただ絵を描いているときにはそういう不安を忘れることができる。絵を描いていれば自分は本当に幸せだと心から思うことができる。これから先も、生きている限り自分は絵を描いていくんだろうなと思うようになりました。この度はありがとうございました。」

 

いけだ・まなぶ…1973年佐賀県生まれ。2000年東京藝術大学大学院修士課程修了。2011年文化庁芸術家在外研修員としてバンクーバー滞在。13年よりアメリカ・ウィスコンシン州マディソンに在住、Chazen美術館で滞在制作中。主な個展におぶせミュージアム・中島千波館(09年)、ミヅマアートギャラリー(10年)、West Vancouver Museum(13年)。主なグループ展に「こたつ派2」(ミヅマアートギャラリー、04年)、「第10回岡本太郎現代芸術賞展」(川崎市岡本太郎美術館、07年)、「ネオテニー・ジャパン―高橋コレクション」(霧島アートの森、08年)、「ヨコハマトリエンナーレ2011」(横浜美術館、11年)、「DOMANI・明日展」(国立新美術館、13年)など。

 

池田学《予兆》(撮影:久家靖秀) 2008年 ©IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

池田学《予兆》(撮影:久家靖秀) 2008年
©IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

 

◇小沢剛氏コメント

「かつて中国人キュレーターに『小沢の作品は趣味性と市民の議論の対象という正反対の性格を同時に持ち得ている』と言われた。その場では『あ、なるほど』となんとなく思ったんですけど、よくよく考えるといったい何を言っているのか分からないんですね。それ以来会っていないので、自分なりにその言葉の意味を昨日考えていました。

 

『趣味性』というのは『ホビー、余暇の道楽』を指すのではなく、『作家あるいは見る人の好み』を意味するのではなかろうか。多くの人は作品を鑑賞したり収集したりするとき、その作品が持つ色味であるとか素材感とかカタチを導入として作品の世界に入っていくんじゃなかろうか。それが『好み』と言えばいいのかなと考えました。そして『市民の議論の対象』とは人々が共通して持っている社会の中での問題を作品の中でいかに扱うか。ビジュアル的に顕在化させ、静かに議論の場を生み出す。そんな作品のことを指しているのではないかなと思いました。

 

(現在、あるいは過去を含めて)多くの日本で生まれる作品は、疑いもせず前者のところに留まっていることが多いのではと思います。また世界のアートシーンの中では後者のような意識を持つことは当然と考えられていて、いかにその問題を作品の中に入れていくかが作家の資質が問われる点ではないかと僕は思っています。今回、このような賞をいただき本当に嬉しく思っています。私のようなタイプの作品も認めていただけたからです。今後もタカシマヤ美術賞は美術の意味を拡張し、質を掘り下げた作家にどんどん光を当てていただけたら幸いです。」

 

おざわ・つよし…1965年東京都生まれ。1991年東京藝術大学大学院美術研究科壁画専攻修了。2002~03年にかけ文化庁在外研修員としてニューヨークに滞在。2012年より東京藝術大学先端芸術表現科准教授。主な個展に「同時に答えろYesとNo!」(森美術館、04年)、「小沢剛:透明ランナーは走りつづける」(広島市現代美術館、09年)。主なグループ展に「ひそやかなラディカリズム」(東京都現代美術館、99年)、「横浜トリエンナーレ2001」(横浜美術館)、「第50回ヴェネチア・ビエンナーレ/ゾーン・オヴ・アージェンシー」(ヴェネチア、03年)、「第4回福岡アジアトリエンナーレ」(福岡アジア美術館、09年)、「光州ビエンナーレ2012」(12年)、「恵比寿映像祭―トゥルーカラーズ」[西京人](東京都写真美術館/恵比寿ガーデンプレイス、14年)など。また2013年のF/T13にてイェリネク連続上演「光のない。(プロローグ?)」の演出も手掛けた。

 

小沢剛《帰ってきたDr.N》 2013年 Photo:Keizo Kioku ©The Japan Foundation

小沢剛《帰ってきたDr.N》 2013年
Photo:Keizo Kioku
©The Japan Foundation

 

◇笹井史恵氏コメント

「憧れていた賞なのでとても嬉しいです。思い返せば2008年、髙島屋美術画廊Xでの『華やぎのかたち』展というグループ展に選んでいただいて、そこから髙島屋の皆様とのご縁がつながった。13年に東京・大阪、横浜の巡回個展を開催させていただき、それが推薦者の目に留まり、この度の受賞に結びつきました。これからも漆を世界に発信していけたらなと思っています。」

 

ささい・ふみえ…1973年大阪府生まれ。1998年京都市立芸術大学大学院美術研究科漆工専攻修了。2003~04年にかけポーラ美術振興財団在外研修性としてタイ国滞在。2014年京都芸術新人賞受賞。2015年京都府文化賞奨励賞受賞。現在京都市立芸術大学准教授。主な個展にチェンマイ大学美術館(03年)、「愛しきかたち」(豊田市美術館、09年)、「みのり」(髙島屋美術画廊 東京日本橋・大阪・横浜、13年)。主なグループ展に「内なるこども」(豊田市美術館、06年)、「京都府美術工芸新鋭展2010」(京都府文化博物館、10年)、「京都工芸の精華展」(ベトナム国立美術館、13年)、「融合する工芸―出会いがみちびく伝統のミライ」(銀座和光ホール、14年)など。

 

笹井史恵《ビラブド》 2013年制作 撮影: KANEOKA Hiroshi

笹井史恵《ビラブド7》 2013年制作
撮影: KANEOKA Hiroshi

 


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