驚異の超絶技巧―満田晴穂が自在置物の新作を発表

2016年06月17日 19:44 カテゴリ:最新のニュース

 

 

超絶技巧の金属工芸「自在置物」を制作する満田晴穂(1980年鳥取県生まれ、東京芸術大学大学院修了)の新作展が、日本橋三越本店で開催されている。

 

自在置物とは、鉄や銀、銅などの金属を素材に龍や蛇、鯉、鳥などの生き物を模した工芸品で、顎や爪、羽、関節などそれぞれのパーツが独立して制作されているために、自由自在な動きをさせることが出来る。もとは鎧や兜などの甲冑を作っていた職人たちが、江戸時代以降の太平の世の中で制作するようになり、明治に入るとその高度な金工技法は海外において高い評価を受けた。国内においては東京国立博物館で1983年に開催された『特別展 日本の金工』で初めて紹介され、この展覧会をひとつのきっかけに「自在置物」という呼称が定着したという。

 

満田は、東京藝術大学の古美術研究旅行で代々自在置物を制作する冨木一門の当代・宗行氏と出会い、弟子入り。これまで昆虫を主なモチーフとして作品を制作してきたが、近年は昆虫以外の新たなモチーフにも挑戦している。今展で会場入り口に展示されているの《自在鶉骨格》は、ウズラの骨格を作品化したもの。過去にも鳥の自在置物は作られているが、骨格を扱ったのは満田だけであろう。

 

 

「昆虫や魚などの外骨格のいきものは自在置物に向いていますが、動物や鳥類など内骨格のいきものを自在置物にしようとすると、どうしても玩具のような嘘っぽいものになってしまいます。僕が鳥に挑戦するならば、骨格の表現かなと」。鳥の骨格は、昨年のラディウム・レントゲンヴェルケでの個展でもインスタレーションとして発表しているが、今展では自立するように仕上げた。「研究をし過ぎて、ケンタッキー・フライドチキンを食べると、どこの骨か分かるようになりました(笑)」

 

その他にも存在感のあるオオヤドカリや丸いフォルム可愛らしくもあるランチュウ、数百パーツからなるオオムカデなど、およそ15点のいずれにも対象への鋭い観察眼と精妙極める技が発揮され、飽きずに見入ってしまう。今日においてはなかなか見られる機会の少ない超絶技巧「自在置物」をぜひ目の当たりにしてほしい。

 

 

 

 

 

【会期】2016年6月15日(水)~21日(火)

【会場】日本橋三越本店本館 6階美術サロン(東京都中央区日本橋室町1-4-1)

【TEL】03-3241-3311

【開廊】10:30~19:30

 

【関連リンク】 満田晴穂と自在置物標本箱

【関連ページ】 フェイス21世紀:満田晴穂

 

ラディウム・レントゲンヴェルケ


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