「二紀会選抜台湾展」国立臺灣藝術大学で開催―初の海外大型展示 絵画・彫刻総数275点で「公募展」文化を発信

2018年06月08日 13:05 カテゴリ:最新のニュース

 

台湾で最高峰の美術大学として知られる国立臺灣藝術大学

 

一般社団法人二紀会(山本貞理事長)は6月25日(月)から30日(土)まで、台湾新北市の国立臺灣藝術大学で初の海外展「2018 絵画&彫刻 二紀会選抜台湾展」を開催する。出品作家は委員から一般出品者まで275名。これまでも美術団体の海外展はあったが、今展ほどの規模の展示はおそらく初めてであろう。国内有数の美術団体による意欲的な試みに、大きな注目が集まっている。

 

 

二紀会は1947年に宮本三郎、田村孝之介、熊谷守一、黒田重太郎らによって結成され、現在は約600名の作家で構成、37の地方支部を有する。主催する「二紀展」(毎年10月・国立新美術館)では、およそ1,000点の絵画・彫刻を展示するなど、日本を代表する美術団体として知られている。創立からの理念の一つ「新人作家の育成」は同会の大きな特色となっており、二紀展会場の「新人室」やベテランと若手が一堂に展示するグループ展「われらの地平線」(日本橋三越本店)など、若手を積極的に抜擢し育てていく姿勢を一貫してもち、多くの優れた作家を輩出してきた。

 

2017年の「第71回 二紀展」(国立新美術館)。絵画と彫刻の2部門、毎年ベテランから若手まで清新な表現が一堂に集う

 

同会初の海外展となる台湾選抜展では、国立臺灣藝術大学内5つの会場を使い、委員から会員、準会員、新人選抜展に入選した一般出品者まで、絵画235点、彫刻40点を展示する。

 

「國際展覽廳」「大漢藝廊」「大觀藝廊」「真善美藝廊」「學生藝廊」という5つの展示施設を使った一大展覧会となる

この1年、日本と台湾を行き来し本事業を推進してきた常務理事・事務局長の南口清二氏は「日本の文化としての公募展というものを、海外の方にも知ってほしい」と語る。「日本に現在どれだけの美術団体があり、どれだけの出品数があるか。そこでは様々な世代の作家が作品を通じて高め合い、プロと一般の出品者がともに活動している。この展覧会は、近代から脈々と続く公募展というものを、海外にはない日本特有の文化として示す取り組みなのです」。

 

美術団体による海外展は主要作家の選抜展となるのが常だが、今展は200点以上の出品が当初からの構想だったようだ。昨年5月の総会で企画を説明し出品者を募ったところ、すぐに280名を超える希望があった。速やかに実行委員会が組織され、個々の作家が持つネットワークを活かしながら、展覧会の実現に向けて1年かけて検討が重ねられてきた。

 

大きな課題となったのは、250点以上を展示できる会場の選定と作品輸送費など種々のコストであったが、公益財団法人日本台湾交流協会が後援について台湾側の全面的な支援を受けられることとなり、実現に至ったという。「台湾にはメセナの意識が根付いていて、文化、芸術へのリスペクトがとても強い。この企画にも想像以上に興味を持ってもらえ、様々な面で手厚く協力していただきました」。

 

「自ら進んで実行するという意識が皆にあったからこそ実現した」と語る南口清二氏

展覧会の初日には台湾の要人や文化人、一般の鑑賞者を招いてレセプション、オープニングパーテイを催し、同大の学生を巻き込んでギャラリートーク、ディスカッションを実施する。早稲田大学の空間映像ゼミナール(佐藤洋一教授)が製作した第71回展の記録映像は「斬新でモダンなもの」に出来上がり、それが会場で流されるなど多様な面から二紀会を紹介する予定だ。

 

もっとも南口氏は「大切なのは作品の前に立ち、鑑賞者に説明すること」と出品作家に伝えている。「それぞれが自分の言葉で作品を紹介することで、表現を通じたコミュニケーションが生まれる。公募展は多種多様な個があり、個の表現がぶつかり合う場です。そこに生まれる緊張感こそが『KOUBOTEN』の魅力なのです。台湾の方々がその空気に触れ、少しでも〈共感〉してくれたら良いですね」。

 

昨今、美術団体や公募展の存在意義が問われるなか、二紀会は今展を通じて改めてその役割と可能性を示そうとしている。彼らの取り組みは異国の鑑賞者の眼にどのように映るだろうか。今後につながる、実りあるものとなることを期待したい。

 

【関連リンク】一般社団法人 二紀会

 


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