インタビュー:永井龍之介氏 ―ふたたび、銀座から

2017年05月01日 14:23 カテゴリ:最新のニュース

 

銀座4丁目のスペースを閉じてからおよそ1年、テレビ東京『開運!なんでも鑑定団』でもお馴染みの画商・永井龍之介氏が、銀座画廊街のメッカと言われる場所に「永井画廊」を新規オープンする。なぜ再び銀座なのか、そして新たなスペースで何を発信していくのか。永井氏に話を聞いた。

 

 

―創業まもなくの銀座7丁目、そして昨年初頭までの東銀座と、永井画廊と銀座の縁は深いですね。

 

永井龍之介氏(以下、永井) 当画廊は1971年に父(※永井三喜男氏)が創業し、73年に銀座7丁目に「永井画廊」としてオープンしました。96年に青山に移転するまでおよそ20年銀座で活動し、前の銀座4丁目のビルにも8年いました。そのためか、周りの方は「永井画廊というとやはり銀座だ」と仰います。そういう訳で、前々から良いところがあればとスペースを探していたんです。

 

―並木通りと花椿通りが交差する角というとても良い立地です。

 

永井 並木通りは今でこそブランド店が増えていますが、老舗画廊も数有り、私にとっては銀座で画廊と言えばこの7・8丁目エリアなんです。ちょうどよいタイミングでこのビルが新築されましたので、ここを新たな拠点にしようと決めました。

 

―オープン記念の企画展第1弾は梅原龍三郎展を開かれます。画廊でこの規模の梅原展はなかなか聞きません。

 

永井 梅原家ご遺族の方々にもご協力いただき杮落としとして開催します。銀座での新たなスタートを梅原龍三郎展で飾れることは、画商冥利に尽きますね。案内はがきに掲載している《ひまわり》は、三菱一号館・あべのハルカス美術館で開催された「拝啓ルノワール先生」展に出品されたばかりのものです。加えて油彩、水彩、デッサン、書など厳選した約20点を展示します。

 

2つの展覧会で新たなスタートを切る永井画廊

 

―続いて5月23日からの第2弾は、ドイツ・デュッセルドルフ在住の画家・高木公史さんの個展を開催されます。日本ではまだあまり知られていない、いわば新鋭をオープン記念として紹介されるところに意気込みを感じます。

 

永井 87年に東京藝大の院を出てすぐドイツに渡り、以来ずっと向こうで活動していた画家です。日本ではほとんど発表しておらず、個展は33年ぶりになります。14年の佐藤一郎さんの退任記念展で初めて彼の作品に触れ、その瑞々しさに新鮮な感動を覚えました。それから一度グループ展に出品いただき、今回の個展につながりました。

 

―高木さんの作品の魅力は何でしょうか?

 

永井 圧倒的な技術もさることながら、モデルの感情、内面にまで眼差しを向け、それを伝えきる表現力が欧州各地で高く評価されています。今回は女性や子どもなど人物の新作、近作約20点を展示する予定です。今の日本の写実絵画ともひと味異なる細密描写をぜひ見ていただきたいですね。

 

 

―誰もが知る巨匠と新鋭作家を幅広くフラットに扱うところが、永井画廊ならではという印象です。

 

永井 梅原のような近代の洋画家を扱いつつ若手作家を発掘していくというのが、永井画廊のスタンスです。新たな永井画廊のスタートとして、この2つほど相応しいものはないでしょう。

 

―銀座に先駆けて、4月29日から立川にも新しいギャラリーをオープンされますね。

 

永井 昨年から縁があって立川に倉庫を借りていましたが、せっかくなのでギャラリーにして地域を巻き込んだ活動をできないかと考えていました。その中で「アール・ブリュット立川」の活動を知りまして、一緒にやりましょうと。「Art Brut TAMA」では作品展示とともにパフォーマンスやトークイベントも開催します。また、展覧会終了後も週末には作品の展示や販売を行っていく予定です。

 

―東京都をはじめ、アール・ブリュットは全国的にも注目を集めており、タイムリーな企画と言えます。

 

永井 ただ近年、日本ではアール・ブリュットというと、障がいを持った方によるアートであると思われがちです。私は、それはアール・ブリュットのほんの一部分であると言いたい。アール・ブリュットは魂の純粋な発露である表現=意図的なものでない、作為のない表現であり、それは正規の美術教育を受けている人でも、障害のない人でもあり得るものです。そのような切り口からのアール・ブリュットを紹介していきたいと考えています。

 

 

―来年には、2014年からはじめた新鋭作家のコンクール「公募―日本の絵画―」もあります。

 

永井 千住博さんや今回の高木さんのような作家との出会いはなかなか無いもので、新たな出会いの場としてこのコンクールを始めました。前回会場としたヨコハマインターコンチネンタルホテルでは、現在もホールや廊下、レストランに作品を展示していますが、5月には新しい作家の作品も展示する予定です。

 

―この1年で練られた企画が、銀座を拠点に、立川、横浜と多方面で一気に花開きますね。

 

永井 東銀座の時はフロアがあった分、絶えず何かをやらなければなりませんでしたから、私自身にとっては実は今までとあまり変わらないんですよ。画商にとって展覧会ビジネスなんて割に合いませんし、億とか数千万の作品を動かしているのが一番良いんです。ただ、素晴らしい芸術を広く伝えていくことが、この仕事の意味なのだと私は考えています。これからも展覧会をはじめ、様々な企画を発信していくので楽しみにしていてください。

 

【展覧会】銀座新規オープン記念第1弾「日本近代絵画の巨匠 梅原龍三郎展」
【展覧会】銀座新規オープン記念第2弾「次代を担う気鋭の画家 高木公史展」

【会期】2017年5月9日(火)~5月20日(土)/2017年5月23日(火)~6月9日(金)

【会場】永井画廊(東京都中央区銀座8-6-25河北新報ビル5F)

【TEL】03-5545-5160

【営業時間】11:00~19:00 ※5月26日(金)は「画廊の夜会」のため21:00まで

【休廊】日曜

 

【展覧会】「Art Brut TAMA」

【会期】2017年4月29日(土・祝)~5月7日(日)

【会場】永井画廊立川ギャラリー(東京都立川市富士見町1‐25‐24 NISHIビル4F)

【TEL】080-9573-5655

【営業時間】10:00~18:00

【休廊】会期中無休

■イベント
・4月29日(土・祝)15:00~17:00 オープニングパーティー
・5月3日(水・祝)15:00~17:00 トーク:永井龍之介
・5月3日(水・祝)15:00~17:00 対談:松嵜ゆかり(アール・ブリュット立川実行委員会)×永井龍之介
・5月5日(金・祝)13:00~15:00 各出品作家によるパフォーマンス

 

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