「第7回 老いるほど若くなる」 グランプリに塔本賢一氏「Hello」

2017年02月17日 17:30 カテゴリ:最新のニュース

 

70歳以上を対象とした全国公募展「老いるほど若くなる」が7回目の開催を迎える。今回は全国40都道府県から440点の応募があり、109作品が入賞・入選に決定した。以前より本展審査員をつとめ、他にも数々のコンクールで審査員をつとめる洋画家で国画会会員の佐々木豊氏(1935年名古屋市生まれ)に、受賞作の見どころなどを寄稿してもらった。

 

グランプリ 天衣賞(松本市長賞) 塔本賢一《Hello》アクリル、糸ほか (73歳)

グランプリ 天衣賞(松本市長賞) 塔本賢一《Hello》アクリル、糸ほか (73歳)

 

 

くどくなるほど良くなる? : 佐々木豊(洋画家、本展審査員)

 

「老いるほど若くなる」とはよく言ったものだ。美術記者として鳴らした氏のことはある。

 

その旨を松本市美術館館長に天下った米倉守氏に伝えると、「でも、応募しないでね」と即座にクギを差した。その時、七十歳になったばかり、出鼻をくじかれた。だから、審査に呼ばれた時は嬉しかった。偉そうな顔して一日中、絵の中を歩き回れるからね。呼んでくれたのは、次の竹内順一館長だったが。

 

3年ごとの開催で出発したのが、今は隔年ごとの開催で、2017年の今年で7回目。小川稔館長と中島千波氏とで審査を終えたばかりだ。応募者は増えている。見たことのない絵に出会えるのも楽しみだ。

 

例えばグランプリの塔本賢一氏。何と筆ではなく、串で描いている。串からしたたり落ちる点で。串には絵具を留める釣り用の浮きゴムがとりつけられている。作者の隣りに描かれているのは苦労を共にした奥様。準グランプリの山本泰彦氏は、諏訪大社の御柱祭を描いた。現地で目撃して感動したという。同じく、準グランプリの阿部香氏は海を背景に、自作の人形を描いている。

 

炎につつまれる原爆ドームを描いた堀内一光氏の絵を見た時は慄然とした。逃げまどう子供たちと、無数の目が散らばっている。異様な絵だ。86歳の作者は、あの時、中学生だった筈。小学生だった私同様、いまだに戦争を引きづっているのが分かる。迷わず佐々木豊賞を。

 

第5回展グランプリの大橋裕一氏は、永井画廊の「公募―日本の絵画2016―」でも優秀賞を得た。画歴は、ほぼ50年、他のコンクール公募展でも、受賞している。阿部氏は光風会の会員である。団体展に所属しながらの出品者も増えている。

 

スポンサー賞の多彩さもこの公募展の魅力だ。浅間温泉の宿泊券もあれば、農協のお米四萬円分というのもある。受賞式後のパーティーには同伴組も多く、華やかである。

 

塔本氏の点描の絵が示すように、手間ヒマかけた絵が多い。時間がたっぷりあるから、とは言うまい。老人の話はくどい。くどくなるほど、良くなる絵もあるのだ。

 

準グランプリ 無縫賞 阿部香《久遠の海》油彩 (79歳)

準グランプリ 無縫賞 阿部香《久遠の海》油彩 (79歳)

 

準グランプリ 無縫賞 山本泰彦《木落とし》油彩 (74歳)

準グランプリ 無縫賞 山本泰彦《木落とし》油彩 (74歳)

 

 

審査員賞 佐々木豊賞 堀内一光《広島原爆71周忌「子供たちのメ・め・目が」》アクリル画 (86歳)

審査員賞 佐々木豊賞 堀内一光《広島原爆71周忌「子供たちのメ・め・目が」》アクリル画 (86歳)

 

 

審査員賞 中島千波賞 山下繁《睦月》日本画 (75歳)

審査員賞 中島千波賞 山下繁《睦月》日本画 (75歳)

 

 

審査員賞 小川稔賞 堀内かづ美《昭和の松本ぼんぼん》日本画 (78歳)

審査員賞 小川稔賞 堀内かづ美《昭和の松本ぼんぼん》日本画 (78歳)

 

健康寿命延伸都市・松本 70歳以上の公募による美術展 第7回 老いるほど若くなる

【会期】 2017年3月4日(土)~4月9日(日)

【会場】 松本市美術館(長野県松本市中央4―2―22)

【TEL】 0263―39―7400

【休館】 月曜、祝日のとき翌平日

【開館】 9:00~17:00(入場は16:30まで)

【料金】 大人600円 大学高校生・70歳以上の松本市民300円

【関連リンク】 松本市美術館

 

 


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