[寄稿]判じ絵の世界 目で見る江戸のなぞなぞに挑戦:西田彩乃

2016年08月01日 14:50 カテゴリ:最新のニュース

 

 

一猛斎芳虎「新板はんじ物 虫」嘉永2年9月~嘉永3年9月(1849ー1850)

一猛斎芳虎「新板はんじ物 虫」嘉永2年9月~嘉永3年9月(1849ー1850)

 

 

江戸時代に大人から子どもまで広く庶民に流行した“絵で見るなぞなぞ”「判じ絵(はんじえ)」。そんな「判じ絵」を120点以上鑑賞できる展覧会が、万葉文化館で開催となった。

 

江戸時代に成立し、広く庶民に浸透していった浮世絵。浮世絵には、美人画、花鳥画、役者画と様々な題材があるが、「判じ絵」もその一つとされる。

 

「判じ絵」とは、絵を判じて(解く、理解する)答えを導き出す遊び…いわゆる「なぞなぞ」の一種とされ、江戸の庶民にとって身近なものであった。その題材は、江戸名所や日本各地の地名、人気役者に力士、動植物に勝手道具、子どもの遊びから人びとの欲望、果ては手紙の内容まで、あらゆるものが「判じ絵」として取り上げられている。言葉を絵に置き換えて表されたユニークな問題の数々は必見である。

 

 

虫かご(駕籠[かご]を蒸す)

虫かご(駕籠[かご]を蒸す)

ヒラメ(平椀の目)

ヒラメ(平椀の目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに時を遡り、まだ平仮名や片仮名がなく漢字だけで文章を表していた時代。七世紀から八世紀半ばにかけての歌を収めたわが国最古の歌集『万葉集』の中にも、なぞなぞのような文字・言葉による遊びが見られる。(例:山上復有山(いで)[山の上に山がある→出])これもまた、万葉人の手掛けた一種の「なぞなぞ」のように思われる。

 

万葉の時代から江戸、そして現代へと、なぞ解きを楽しむ人びとの「遊び心」は色褪せることはないようだ。

 

本展では、判じ絵の研究者で作品を多く所蔵されている蛇足庵が所蔵する作品を一堂に紹介する。これらの作品は関西地域では初めての公開となる。

 

歌川重宣ら江戸の浮世絵師たちが趣向を凝らした様々な問題の中には、当時の人びとには簡単に解けても、現代の私たちにとっては馴染みがなく難しい問題も多い。ユーモアとセンスをフル稼働して、江戸の人びとの遊び心に挑戦していただきたい。

(奈良県立万葉文化館学芸員)

 

 

【展覧会】判じ絵の世界 目で見る江戸のなぞなぞに挑戦

【会期】2016年8月11日(木・祝)~10月2日(日)

【会場】奈良県立万葉文化館(奈良県高市郡明日香村飛鳥10)

【TEL】0744―54―1850

【休館】月曜、祝日のとき翌平日

【開館】10:00~17:30(入館は閉館30分前まで)

【料金】一般800円 高校・大学生500円 小・中学生以下無料

【関連リンク】奈良県立万葉文化館

 

 

太鼓(鯛の子ども)

太鼓(鯛の子ども)

■ 関連イベント:講演会

 

第1回 判じ絵あれこれ ~江戸庶民の目で見るなぞなぞ~

【日時】8月11日(木・祝) 13:00~

【講師】岩崎均史(静岡市東海道広重美術館館長)

 

第2回 ことば遊びの系譜と判じ絵

【日時】9月10日(土)14:00~

【講師】小野恭靖(大阪教育大学教授)

 

※ともに申込不要、参加無料(先着150名)、会場は同館 企画展示室内にて

 

 

 


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