黒田清輝の代表作を一堂に―記念館「特別室」、桜の季節に公開

2015年03月27日 11:47 カテゴリ:最新のニュース

 

提供:東京文化財研究所

 

1893年に9年間のフランス留学を終えて帰国した洋画家・黒田清輝は、それまで日本になかった光の表現と、新しい画風をもたらし、明治の絵画、ひいては美術の方向性を大きく変えていった。作者の感性にもとづく自己表現の大切さや、社会規範に縛られない造形表現の自由は、今日では自明と思われているであろうが、そうした理解の広まりも、黒田の尽力に負うところがある。

 

ラファエル・コランのもとでアカデミックな絵画教育を受け、1891年に「読書」でフランス美術家協会展に入選を果たす一方で、黒田は19世紀後半のフランス画界に登場していた印象派や象徴主義的絵画にも学ぶところがあった。帰国後は日本の洋画を国際的にも認められるように導こうと、フランスで最も本格的な絵画と位置づけられていた神話や歴史物語に取材した大画面の群像表現を「昔語り」(1898年)の制作で試み、また、フランスの新傾向をも取り入れ、日本の油彩画を描く試みを続けた。1900年パリ万博で再渡仏。フランス美術界を美術教育という視点から観察して、美術家を取り巻く社会的環境が重要であることに気づき、帰国後は、美術展覧会の開設や美術館設立などを政府に建言し、美術界全体の活性化に努めた。

 

その志半ばにして1924年7月に死去するに際し、黒田は、遺産の一部を美術振興のために充てるよう遺言した。それを受けて28年に黒田記念館が竣工し、30年に開所した東洋初の美術研究所の所屋となった。同館には当初から黒田の画業を顕彰する黒田記念室が設けられ、収蔵庫兼展示室として限定的に公開されてきた。

 

今年1月、黒田記念館は耐震工事を終え、オリジナルの建築と内装を尊重しつつ、温湿度の安定等、今日の美術館的環境を調えて約3年ぶりに再開した。再開後は公開日を大幅に増やし、東京国立博物館の開館時間に準じて開館。黒田の画業を紹介する黒田記念室に加えて、代表作「読書」「舞妓」「智・感・情」「湖畔」を一堂に集め、作品が最も映える壁色と最適の照明を調えた特別室を新たに設置した。特別室は桜の季節に合わせて公開される。是非、ご来訪いただきたい。

(山梨絵美子:東京文化財研究所)

 

黒田清輝「湖畔」 1897年 69.0×84.7cm キャンバス、油彩 東京国立博物館蔵

 

黒田記念館「特別室」公開(第2回)

【公開期間】第2回:3月23日(月)~4月5日(日)

【住所】東京都台東区上野公園13-9 TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)

【休館】開室期間中無休

【開館時間】9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)

【料金】無料

【関連リンク】黒田記念館

 


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