【BOOK】 いま読みたい アートの本10選

2015年01月05日 11:04 カテゴリ:最新のニュース

 

「Art Annual online」編集部がおすすめするアート関連書籍10選を紹介する。注目の美術館の魅力を伝えるものから名画に秘められた謎に迫るもの、作家のテキストを通じてそのあゆみをたどるものまで、バラエティに富んだ新刊・近刊より、あなた好みの一冊をぜひ見つけてほしい。

 


 

『庭園美術館へようこそ 旧朝香宮邸をめぐる6つの物語

 

朝吹真理子、福田里香、小林エリカ、ほしよりこ、mamoru、阿部海太郎著 (河出書房新社刊)
本体1,800円

 

1983年に開館した旧朝香宮邸、東京都庭園美術館が2014年11月22日、31年振りにリニューアルオープンした。現代美術家・杉本博司監修の新館も魅力だが、修復なった本館のアール・デコ調の外装や調度に改めて注目が集まった。広い敷地の自然庭園と一体になった邸宅空間には、他の美術館では味わえない高貴な趣き、雰囲気がある。開館当初のグッゲンハイム美術館展はじめ幾多の名品展があったが、それらの記憶はいつの間にか消え去っても、白金台に佇む旧宮邸はいまだに豊かなロマンを与えてくれる。それは何故か、という疑問に小説家や漫画家ら6人の識者が答えてくれる。

 


 

『パブリックアートについて語り合う。© 「くれあーれニュース」座談録 日本に「1%フォー・アーツ」の実現を

 

滝久雄編 (中央公論美術出版
本体2,300円

 

本書は2007年7月から2014年8月にかけて刊行された「くれあーれにゅーす」(発行=公益財団法人 日本交通文化協会)の第1号から10号に収録された全9回の座談会、および特別寄稿を再編・収録したもの。国家予算の1%を芸術・文化に充てる制作「1%フォー・アーツ」の実現を呼びかける同協会理事長・滝久雄が、同政策におけるパブリックアートの役割とその重要性について第一線で活躍する作家・識者らと論を交わす。収録の座談会出席者は平山郁夫、野見山暁治、澄川喜一、高階秀爾、宮田亮平、酒井忠康、絹谷幸二、青木保、隈研吾、菅義偉など(登場順)。

 


 

『屋根の日本建築』

 

今里隆著 (NHK出版)
本体1,800円

 

「日本建築の美しさは屋根にある」―その信念を抱きながら60余年にわたり建築家人生を歩んできた今里隆。本書では、自身が携わってきた池上本門寺や料亭・金田中、国技館、平山郁夫邸、松尾敏男邸、平山郁夫美術館など多様なジャンルの実例を挙げ、それぞれにまつわる体験談を紹介。屋根はもちろんのこと、デザインバランスや防災などの機能面にも焦点をあて、日本建築の重要な要素を網羅している。また本書では、施主とのエピソードも収められており、今里隆という建築家の誠実さを随所に垣間見ることができる。日本建築の魅力を後世へと伝えるためにまとめた本書を読めば、「日本建築の美の神髄」の一端を理解できるだろう。専門知識がなくても十分に楽しめる内容だ。

 


 

『偽装された自画像―画家はこうして嘘をつく』

 

冨田章著(祥伝社)
本体各1,600円

 

東京ステーションギャラリー館長による本著は、ボッティチェルリからフリーダ・カーロまで20人の画家が描いた自画像を俎上に載せ、どのような「たくらみ」が隠されているか読み解くものだ。写実的に見える自画像でも現実をそのまま描いた可能性は少なく、そこには画家の野心やプライドなどが隠されている。医に染まぬ壁画制作を強制されたミケランジェロ、「出たがりオヤジ」の風俗画家ヤン・スーテン、「思い込みの人」ゴッホ。意識的なものであれ、無意識的なものであれ、彼らが仕掛けた演出を探るうちに、読者は画家の生きた時代に誘われ、名画の新しい顔を発見するだろう。

 


 

『アートにとって価値とは何か』

 

三潴末雄著 (幻冬舎)
本体1,700円

 

会田誠や山口晃など第一線で活躍するアーティストを擁するミヅマアートギャラリー。本書はその代表・三潴末雄による初の著書。1980年代からギャラリー活動を開始し、94年にミヅマアートギャラリーを開廊。以降その活動を海外にも広げてきた著者。日本現代美術界を牽引してきた実体験に基づくライフストーリーとともに、今後日本の現代美術が向かうべき道筋を示した一冊。

 

 


 

『終わりなき近代 アジア美術を歩く 2009-2014』

 

黒田雷児著 (グラムブックス)
本体1,800円

 

福岡アジア美術館 事業管理部長・学芸課長の著者によるエッセイ集。『新美術新聞』連載「通信アジア from A to J」を核としている。「現在も続く〈近代〉」という仮説のもと、大規模な展覧会や国際市場、国家的なプロジェクトなどからは見えてこない周縁的なアジア美術の動向を紹介。政治的、社会的、歴史的状況と不可分に呼応しながら発生、変容していくアジア美術の今を鋭く切り取った一冊だ。

 

 


 

『柚木沙弥郎 92年分の色とかたち』

 

柚木沙弥郎著 (グラフィック社)
本体2,200円

 

ページを繰ると、すぐに柚木氏本人が現れる。92歳にしても「大家」という言葉の似合わない、物腰柔らかなチャーミングな姿だ。本書は作品集というよりも、氏の美意識やあそび心をしなやかに伝える、ある種の「思想書」。アトリエにあふれる玩具や雑貨の素朴な美しさは、氏の精神そのものだろう。ゆかりの松本と盛岡へ誘う構成も妙。名久井直子のブックデザインもとても良い。

 

 


 

『滅びと再生の庭 ―美術家・堀浩哉の全思考』

 

堀浩哉著(現代企画室)
本体3,700円

 

60年代末より「美共闘」の代表として活動、さまざまな表現・文筆行為を行い、2014年度で多摩美術大学教授を定年退任、10月から11月にかけて同大美術館にて退職記念展を終えた筆者。同展に合わせ、69年から現在まで『新美術新聞』はじめ各紙誌に発表した多分野に跨る文章をまとめたのが本書。時代の裏面側面を浮かび上がらせるA5判、700頁超えで厚さ5.5cmの本書は、堀同様、大きな存在感を放つ。

 

 


 

『フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション』

 

スティーヴン・ナハマノヴィッチ(フィルムアート社)
本体2,600円

 

音楽や演劇といった領域で特に顕著な「インプロヴィゼーション(即興)」。では、即興はどのようなもので、何をもたらすのか。即興ヴァイオリニストの著者による1990年の原書は、表現者のバイブルとして欧米で読み継がれてきた。芸術における即興の本質を探り、「ひらめき」といった創造行為を読み解く。本書は即興の理論化であり、表現者の創造性をより高める一冊である。

 

 


 

『現代美術史日本篇 1945-2014

 

中ザワヒデキ著(アートダイバー)
本体1,500円

 

中ザワヒデキは、千葉大学医学部在学中の1983年からアーティスト活動を開始、卒業後眼科医となったがイラストレーターに転身、さらにCDの画素を文字等の記号に置き換える美術家に転身し、その後も変遷を繰り返しながら制作活動をしている。著書はすべて美術史関連のもので本書で3冊目。戦後の日本美術史を「異色」の美術家の視点でとらえ解説している。

 

 


 


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