【レポート】 第61回全国博物館大会=11月7・8日 岐阜市

2013年11月27日 17:59 カテゴリ:最新のニュース

 

「博物館の可能性―新たな博物館像をめざして―」をテーマに

ICOM日本招致、ボランティア問題、「記憶」「体験」をいかに伝えていくか

 

開会式より=11月7日

開会式より=11月7日

財政難や入館者数減少など、博物館をとりまく環境は厳しい。その中でいかに存在感を増していくべきか。11月7・8日に岐阜市で開かれた「第61回全国博物館大会」(主催・公益財団法人 日本博物館協会)は、「博物館の可能性―新たな博物館像をめざして―」がテーマ。初日7日には基調講演、シンポジウム、8日には「観光と博物館」「高齢化する社会と博物館」などの分科会が開かれ、各館の取組みや模索する姿が共有された。

 

日本博物館協会(日博協)は、現在では国内4千館と言われる博物館施設(博物館、美術館、科学館、動物園など)を横断する組織として1928年に発足。この4月に公益財団法人となった。

 

開催地・岐阜は、博物館法制定に尽力し、「博物館の父」とも呼ばれる棚橋源太郎(1869~1961)の生誕地。日博協の前身、博物館事業促進会の創設や、月刊誌『博物館研究』発刊の中核となった人物であり、初日には矢島國雄・明治大学教授による「棚橋源太郎の見た夢」と題した基調講演から、その業績が回顧された。

 

7日のプログラムは日博協会長の銭谷眞美・東京国立博物館館長の挨拶による開会式、文部科学省・文化庁の報告などに続き、午後から全国博物館会議が開催された。

 

シンポジウムの司会をつとめた半田昌之・日博協専務理事

シンポジウムの司会をつとめた半田昌之・日博協専務理事

半田昌之・日博協専務理事からは、8月にブラジル・リオデジャネイロで開催された国際博物館会議(ICOM:International Council of Museums)の報告がなされた。2019年以降のICOM開催地へ日本は立候補を検討しており、ブラジルへの初の日本ブース出展などによる手ごたえや、招致活動への準備委員会を12月に立上げ予定であることなどが話された。

 

続いて行われたのが、半田氏を司会としたシンポジウム「今求められている新たな博物館」。

 

徳川義崇・徳川美術館館長は自館の「ボランティアの会」設立の経緯とその必要性、直面する問題点を指摘。高齢化によって業務への支障も生じるようになり、定年制(77歳)をしいたことや、「派閥」問題、また職員よりも長年従事する者とのコミュニケーションの難しさなど、いずれの施設でも直面しうる問題点が挙げられた。

 

解決に向けて必要なのは、館(学芸員ら)とボランティア・スタッフのコミュニケーションという。その上で徳川氏はボランティアへは金銭のような対価でない魅力を用意することが必要とし、学芸員が身近にいるという環境から「“知識”をお返しするのが正しい接し方ではないか」と投げかけた。

 

全国から集った日博協会員や関係者は400余名にのぼった

全国から集った日博協会員や関係者は400余名にのぼった

「原爆資料館」とも称される広島平和記念資料館の志賀賢治館長は記憶・体験の伝承の難しさから、「誤解を恐れずに言えば、悩ましい展示をしている」と話す。被爆者には「体験を語らない」という風潮もこれまで強かったが、「孫には語ってもいい」という状況が近年あるとし、その語りをどう未来につなげていくか様々な試みが報告された。

 

来年の第62回大会は11月19~21日に三重県津市での開催を予定する。

 

2018年には創立90周年を迎える日本博物館協会。19年ICOM日本招致活動は、停滞感を払拭する起爆剤ともなりうるだろう。それとともに、各館は自らの足下である地域を見つめ続けていかなければならない。シンポジウムでの榎本徹・岐阜県現代陶芸美術館館長の言葉は、ひとつの理想を示した。地方の住民にとって博物館・美術館は「異物」かもしれないと断りながら、余所から人が訪れた際、住民がその人をもてなすための、「応接間」のように使ってもらえればと話した。

 

「新美術新聞」2013年12月1日号(第1330号)3面より

 

【関連リンク】 公益財団法人 日本博物館協会

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