【レポート】 大原美術館で特別企画展「Ohara Contemporary」が開幕 7/7まで

2013年05月28日 15:34 カテゴリ:最新のニュース

 

日本の現代アートを一挙公開 本館では「名品たちの現代(コンテンポラリー)」同時開催中

 

大原理事長と高階館長を囲む参加アーティストたち

大原理事長と高階館長を囲む参加アーティストたち

 

西洋美術を中心に所蔵する日本初の私立美術館として1930(昭和5)年に開館した大原美術館(岡山県倉敷市)で、21世紀に入り新たに収蔵した48組の現代アーティストの作品を一堂に展示する特別企画展「Ohara Contemporary(オオハラ・コンテンポラリー)」が4月20日開幕した。

 

西洋のほか、日本美術や工芸作品を所蔵する同館が、現代アートにさらに力を入れ始めたのは、高階秀爾館長が就任した2002年以降のこと。大原謙一郎理事長は、「過去83年の歴史を通じて常に最先端であり続けた大原美術館が、当時のコンテンポラリーであった泰西名画だけでなく、現在も最先端であり続けるための展覧会がOhara Contemporaryである。と同時に本館では西洋、日本の美術を制作年代順に並べる今だかつてない展示をしています。この揺るぎない土台があるからこそ、最先端のコンテンポラリーができる」と、今、現代アートを取り上げる意義を強調する。

 

Ohara Contemporaryの分館会場風景

Ohara Contemporaryの分館会場風景

「古いものと同時に、常に時代とともに成長する美術館という信念のもと、新しいものに目を向けてきた」という高階館長をはじめスタッフが、“将来を担う若い作家への支援”を事業の目的に、継続してきたプロジェクトは3つからなる。一つは02年より旧大原家の別邸である有隣荘(1928年築)が特別公開される春と秋のいずれかに、作家に有隣荘を舞台に、その特性を活かした作品を展示してもらってきた。二つ目がARKO(アルコ、Artist in Residence Kurashiki, Ohara)と呼ばれる作家による滞在制作。毎年一人が児島虎次郎のアトリエで滞在制作をし、制作された作品を展示公開する取り組みとして、05年以降毎年作家を公募し招聘している。さらに07年には映像、パフォーマンス、イベント等の作品を手掛ける作家を取り上げ、倉敷に取材した作品を制作、公開するAM倉敷(Artist Meets Kurashiki)を開始するなど、10年あまりの活動は多岐にわたってきた。

 

工芸・東洋館に展示される三瀬夏之介さんと棟方志功の作品

工芸・東洋館に展示される三瀬夏之介さんと棟方志功の作品

「近年の現代アートは壁に掛ける絵や彫刻だけでなく、他のジャンルとの共同あるいは越境、境界横断的な作品が多い」(高階館長)と館外においても現代アートの様々な側面に注目し、若手作家の登竜門として上野の森美術館で毎年開催されているVOCA(Vision of Contemporary Art)展では05年から大原美術館賞1名を独自に選出、受賞作を買い上げるなど、コレクションの充実に繋げてきた。

 

本展出品作86点は絵画、立体、写真、映像など若手作家の多様化する表現と作品の共鳴が見どころの一つとなっている。今後は作家や作品への理解と評価が深まり、国内に止まらず海外をも視野に入れたスケール感にも期待が寄せられる。「出品作家は現在最も旬な作家であり、全員が海外でも活躍する可能性があります。そのなかで行政や美術館やメディアなどが、どのように応援できるか、その道筋をつけていくことが必要である」と高階館長は指摘する。

 

一方、「倉敷人としていつも思うことは、倉敷という何かの魂が若い作家、鑑賞者を呼び集めているのではないか、という気がするんです」という大原理事長の言葉にこそ、大原美術館のゆるぎない土台、その原点があるのではないか。現代の最先端美術館へ足を運んでほしい。

 

工芸・東洋館の中庭で「サン・チャイルド」とヤノベケンジさん

工芸・東洋館の中庭で「サン・チャイルド」とヤノベケンジさん

参加アーティスト

会田誠、淺井裕介、浅見貴子、岩熊力也、上田暁子、植松奎二、太田三郎、岡田修二、奥村美佳、小沢剛、押江千衣子、小谷元彦、小野博、off-Nibroll、柏原由佳、ジュン・グエン=ハツシバ、鯉江真紀子、鴻池朋子、小林孝亘、斎城卓、齋藤芽生、坂本夏子、佐藤翠、杉本博司、田窪恭治、田嶋悦子、辰野登恵子、津上みゆき、中川幸夫、蜷川実花、花澤武夫、東島毅、彦坂敏昭、樋口佳絵、平井優子×藤本隆行×辺見康孝、福田美蘭、藤本由紀夫、北城貴子、眞板雅文、町田久美、松井えり菜、三瀬夏之介、森山大道、やなぎみわ、ヤノベケンジ、山口晃、ログズギャラリー、渡辺おさむ(50音順)

 

鯉江真紀子さんの写真作品、左から「From the series “G”Is-1」、「From the series “M”Oh-1」、「From the series “M”Oh-2」、すべてタイプCプリント、アクリルパネル貼、2008年制作

鯉江真紀子さんの写真作品、左から「From the series “G”Is-1」、「From the series “M”Oh-1」、「From the series “M”Oh-2」、すべてタイプCプリント、アクリルパネル貼、2008年制作

【会期】 2013年4月20日(土)~7月7日(日)

【会場】 大原美術館分館、工芸・東洋館(岡山県倉敷市中央1―1―15)

☎086―422―0005

【休館】 月曜

【開館時間】 9:00~17:00(入館は閉館30分前まで)

【料金】 一般1300円、大学生800円、小中高生500円(本館、分館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館の料金含む)

【関連リンク】 大原美術館

 

 

 

「新美術新聞」2013年5月21日号(第1312号)3面より

 

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