【レポート】 東京国立博物館 東洋館、1月2日リニューアルオープン

2013年01月07日 14:49 カテゴリ:最新のニュース

 

耐震補強とLED照明などより美しく見やすい展示に

 

2013年1月2日、東京国立博物館(トーハク)は、耐震補強工事のため2009年6月より休館していた東洋館がリニューアルオープン、ダブルでめでたいお正月となった。新装なる東洋館の基本コンセプトは『東洋美術をめぐる旅』、アジアを網羅する充実のコレクションと安全・快適な展示環境で来館者を極上の文化の旅に誘おうとの趣旨だ。展示ケースや照明、バリアフリー、ミュージアムシアターなど関連設備も一新され、東博目玉の展示施設となった。

 

第一に、リニューアル工事により、東洋館は耐震強度が向上し、高レベルの耐震構造に生まれ変わった。展示ケースの免震装置などが全て新しくなり、ケースには低反射ガラスを用い、蛍光灯に代わってLED照明が導入された。展示デザインも全面リニューアルされ、より美しく見やすい展示を志向し、安全で快適な環境を実現した。

 

同時にバリアフリーと多言語対応も充実完備させた。中央の吹き抜けには新たにエレベーターが設置された。車椅子を利用の方も御目当ての展示室にすぐ行けるよう配慮された。各展示室の案内表示や作品の名称などは日本語だけでなく英語・中国語・韓国語の4言語表記を実現した。年々増加しつつある海外からの来館者に対しても行き届いたサービスをとのこと。

 

新設の展示コーナーも充実。従来よりも展示室を3室増やし、これまでは限定公開しかできなかった「クメールの彫刻」、「インドの細密画」、「アジアの民族文化」など、地下1階に専用展示部分を設け、新しい出会いと発見を観覧者に提供する。

 

 

東博はもともと世界有数の東洋美術コレクションを有するミュージアム。リニューアルによって、宋元の書画、中国陶磁、中国漆工、西域の美術など世界でもトップレベルのコレクションを再認識してもらう充実した環境が整ったともいえよう。これからは博物館を訪れた人には必見の場所となりそうだ。

 

互いに影響を受けつつ育まれてきた東洋の文化。同博物館では、東洋館でその関係性が見えてくるのではないかとし、キャッチコピー「アジアのブンカにありがとう!」を打ち出す。地域も時代も幅広い東洋館の所蔵作品が、観覧者をアジアの旅に誘う。まさに新・東洋館の基本コンセプト『東洋美術をめぐる旅』の展示空間。

 

これまで東洋館は本館、平成館と比べ、同館をよく訪れる人にとってもやや馴染みが薄かった印象があるが、今回のリニューアルは来館者に東洋館の新たな魅力の大きなアピールになりそう。

 

 

また、最新設備を導入したミュージアムシアターが、東洋館地下1階に新たにオープンした。300インチの大型スクリーンにハイビジョンの約4倍の超高精細映像が写し出され、ナビゲーターによるライブ上演でVR作品が楽しめる。新年の1~3月はアンコール遺跡バイヨン寺院をテーマにした新作など2つのプログラムが交互に上演される。

 

さらに東博では、新年1~2月、特別展「書聖 王羲之」および「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡」開催にあわせて乳幼児を対象とした9日間の託児サービスを試行する。自分のための時間をもちたい、独身のときのようにゆっくり美術を楽しみたい、との子育て世代の声に応えるためと同館では説明。今回の無料サービスはお客のニーズを調査し、問題点を把握するための試行という位置づけで、来年度の本格導入を目指す。

 

「新美術新聞」2013年1月1・11日合併号(第1300号)3面より

 


関連記事

その他の記事