【千葉市美術館】杉本博司 趣味と芸術/今昔三部作

2015年08月25日 13:46 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

杉本博司 趣味と芸術/今昔三部作

 

 

1996年1月に開館記念展の第2弾として「Tranquility−静謐」展を開催した千葉市美術館は、同展の招待作家のひとり杉本博司の《海景》シリーズ18点を展示し、展覧会終了後それらを同館のコレクションに収蔵した。そして今年11月に開館20周年を迎えるにあたり、再び杉本博司を招待し、個展を開催する。

 

千葉市美術館は、現代美術と日本の近世絵画・版画を活動の柱とするユニークな美術館。一方で古美術商の経験を持つ杉本博司も、日本美術に大変造詣が深く、三十三間堂の千体仏を写した《仏の海》(1995)や《松林図》(2001)など、日本の伝統的美を自身の写真作品に取り入れてきた。また2003年より世界各地を巡回した展覧会「歴史の歴史」では、自らコレクションした古美術品を自作と組み合わせたインスタレーションも試みている。

 

今展は大きく2部から構成。7階の「趣味と芸術」では、平安から江戸時代の古物を中心に、西洋伝来の品々、昭和の珍品をも含む杉本コレクションを使い、作家自ら25の床のしつらえを制作。これらは『婦人画報』で連載中の「謎の割烹 味占郷」のなかで、杉本が各界の著名人をもてなすために、毎回そのゲストにふさわしい掛軸と置物を選んで構成した床飾りを再現したもの。同時代の美術品を組み合わせたしつらえもあれば、17世紀の西洋版画を自ら軸装した《レンブラント天使来迎図》のかたわらに江戸時代初期の《織部燭台》を配したり、昭和の建築家白井晟一の書の脇に奈良時代の《百万塔》を置くといった、見るものの意表を突くような斬新なしつらえもあり、独自の「趣味=審美眼」により古今の名品・珍品を組み合わせることで、新たな「芸術」を生み出す。

 

また8階の「今昔三部作」では、杉本の代表作というべき3つの写真シリーズ、《ジオラマ》(1975-)、《劇場》(1975- )、《海景》(1980-)あわせて18点を、大判プリントで展観。今回の展示では、各シリーズとも初期作から最新作までを含むため、杉本自身により「今昔三部作」と題されている。なお幅4mを超えるジオラマシリーズの最新作《オリンピック雨林》(2012)や、珍しい縦版型による劇場シリーズの最新作《Teatro dei Rozzi, Siena》(2014)が日本初公開となる。

 

 

■杉本博司 趣味と芸術

人類史の中で精神は時代に宿り、そして芸術は時代精神と同衾した。しかし今、時代は高度資本主義の中で、宿るべき精神の不在、または精神の不在そのものの商品化へと流されつつある。芸術が腐臭を放し始めた昨今、私は趣味の世界へと時代を遡行していくことにした。古(ルビいにしえ)の文明が残してくれた遺物を愛しみ、撫でさすり、眺めていると、失ったものの大切さと共に、今の時代が見えてくる。私は我が道を楽しみながら生きて来た。これを道楽と言う。道楽者のアナクロニズム、私はそれ以外に時代を映す術を知らない。

杉本博司

 

■杉本博司 今昔三部作

二十代なかばに道楽として始めた写真の道楽の果てとして、ジオラマ、劇場、海景三部作の、最古作と最新作を展示する。成長と衰退、希望と諦念、未熟と完熟、青さと傲岸、昔の名前でやってます。

                                      杉本博司

 

【会期】2015年10月28日(水)〜12月23日(水・祝)

【会場】千葉市美術館(千葉市中央区中央3-10-8)

【TEL】043-221-2311

【休館】11月2日(月)、12月7日(月)

【関連リンク】千葉市美術館

 


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