【宮城県美術館】わが愛憎の画家たち ― 針生一郎と戦後美術

2015年01月08日 18:56 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

アヴァンギャルドを見つめつづけた反骨の評論家の足跡

 

ラインハルト・サビエ《壁の痕跡すら読みとる人間の知恵―死の国の馬たちに囲まれた針生一郎氏像》(三枚のうちの中央)1997年 個人蔵

ラインハルト・サビエ《壁の痕跡すら読みとる人間の知恵―死の国の馬たちに囲まれた針生一郎氏像》(三枚のうちの中央)1997年 個人蔵

 

文芸評論から出発し、1950年代に刊行された雑誌『美術批評』に芸術論や展覧会評を寄稿して注目され、中原佑介、東野芳明とともに“美術評論の御三家” と呼ばれる存在となった針生一郎。その針生が主に1950~70年代に関わった芸術運動や展覧会に焦点をあて、著書『わが愛憎の画家たち』などで論評した作家と作品を紹介し、ひとりの評論家の視線を通して戦後美術史を再読する展覧会が宮城県美術館で開催される。

 

針生は1925年宮城県仙台市生まれ。東北大学文学部を卒業後、東京大学大学院で美学を学んだ。大学院在学中には岡本太郎、花田清輝、安部公房らの「夜の会」に参加。その後多摩美術大学教授、岡山県立大学大学院教授、和光大学名誉教授などを歴任。またヴェネチア・ビエンナーレの日本館コミッショナー(1968年)、第10回サンパウロ・ビエンナーレ 日本側コミッショナー(1977年)、第3回光州ビエンナーレ 特別展「芸術と人権」展ディレクター(2000年)なども務めた。

 

岡本太郎 《重工業》 1949年 川崎市岡本太郎美術館

岡本太郎 《重工業》 1949年 川崎市岡本太郎美術館

 

戦後、美術が自律した芸術表現として純粋性の追求に向かう潮流の中で、針生は一貫して「社会と人間」という視点をもって、作家たちの表現行為と作品を批評。そして、行動する評論家として、晩年までさまざまな文化運動にも関わり続け、2010年に逝去した。今展では岡本太郎をはじめ、河原温、池田龍雄、中村宏、赤瀬川原平など戦後の日本美術史に大きな足跡を残してきた作家たちの作品を展覧。針生の交流の広さも垣間見る事ができる。

 

主な出品作家

岡本太郎、香月泰男、鶴岡政男、山下菊二、河原温、勅使河原宏、池田龍雄、中村宏、小山田二郎、斎藤義重、

桂ゆき、今井俊満、菅井汲、山口勝弘、篠原有司男、赤瀬川原平、高松次郎、立石紘一、岡本信治郎、菊畑茂久馬、

宮城輝夫、丸木位里・俊、横山操、中村正義、片岡球子、朝倉摂、粟津潔、磯崎新 ほか

 

山下菊二 《あけぼの村物語》 1953年 東京国立近代美術館

山下菊二 《あけぼの村物語》 1953年 東京国立近代美術館

 

立石紘一 《哀愁列車》1964年 高松市美術館

立石紘一 《哀愁列車》1964年 高松市美術館

 

【会期】2015年1月31日(土)~3月22日(日)

【会場】宮城県美術館(仙台市青葉区川内元支倉34-1) TEL 022-221-2111

【休館】月曜

【開館】9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)

【料金】一般1,000円 学生800円 小・中学生・高校生400円

【関連リンク】宮城県美術館

 

■映画上映会

『日本心中 針生一郎・日本を丸ごと抱え込んでしまった男』(監督=大浦信行 出演=針生一郎、大野一雄ほか)

【日時】1月31日(土)、2月22日(日) 各日とも13:30~

【会場】宮城県美術館アートホール

【料金】無料

 

『9.11-8.15 日本心中』(監督=大浦信行 出演=針生一郎、重信メイ、金芝河 ほか)

【日時】2月1日(日)、2月21日(土) 各日とも13:30~

【会場】宮城県美術館アートホール

【料金】無料

 

 

■美術館講座「戦後の美術と批評をめぐって」(全4回)

全て開場はアートホール(聴講無料) ※要事前予約 申込先:宮城県美術館教育普及部(022-221-2114)

①戦後からの出発-日本の前衛芸術家たち

【日時】3月1日(日) 13:30~

【講師】池田龍雄(画家)

 

②批評の英雄時代-戦後美術と戦後批評の成立

【日時】3月8日(日) 13:30~

【講師】光田由里氏(美術評論家)

 

③美術批評の現在進行形

【日時】3月15日(日) 13:30~

【講師】椹木野衣(美術評論家・多摩美術大学教授)

 

④批評の闘争/事物の思考-針生一郎を読む

【日時】3月22日(日) 13:30~

【講師】沢山遼(美術評論家)

 


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