【東京】 描かれた風景~絵の中を旅する~

2014年03月04日 13:06 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

「富士山の見える美術館」で、古今東西 名所めぐり!

大橋美織(静嘉堂文庫美術館学芸員)

 

重要文化財「四条河原遊楽図屏風」江戸時代・17世紀〈図1〉

重要文化財「四条河原遊楽図屏風」江戸時代・17世紀〈図1〉

 

古来日本では四季の移り変わりの中で自国の風景を愛で、多くの名所絵・風景図が描かれてきました。本展は室町時代から近代まで、北は日本三景の一つ松島から南は大分県の名勝・耶馬溪に至るまで、日本各地の名所を描いた所蔵品70点を一堂に集め、五章にわけて紹介するものです。

 

歌川国貞(三代豊国)、歌川広重「双筆五十三次 はら」江戸時代・安政元年(1854年)〈図2〉

歌川国貞(三代豊国)、歌川広重「双筆五十三次 はら」江戸時代・安政元年(1854年)〈図2〉

第一章では、近世初期風俗画の傑作として知られる重要文化財「四条河原遊楽図屏風」〈図1〉を御覧いただき、約四百年前の活気あふれる都のにぎわいをお楽しみいただきます。第二章では、門外不出、静嘉堂でしか御覧いただくことのできない鮮やかな色彩の残る浮世絵で全国各地の名所をめぐります。特に役者絵で人気を博した歌川国貞(三代豊国)と、風景画で一世を風靡した歌川広重による豪華なコラボレーション作品「双筆五十三次」〈図2〉は必見です。続いて第三章では、世界文化遺産登録で話題となった富士山を、絵画や版本、工芸品からご覧いただきます。中でも酒井抱一「富士山図」〈図3〉は、深い紺青の背景に鮮やかな朱色の旭日、純白の富士にたなびく金雲といった装飾性あふれる富士山図として、静嘉堂でも一番人気の作品です。館内では、ラウンジから富士山が望めますので、実際の富士山とあわせてお楽しみください。

 

また第四章の「水墨主体の風景表現」で目玉となるのが、久々の公開となる室町時代の名品「堅田図旧襖絵」です。もと京都・大徳寺の塔頭・瑞峯院の襖絵で、十六世紀の水墨技法による風景描写がみられる貴重な作品。室町絵画の和漢融合の様相を、この機会にぜひご堪能ください。

 

酒井抱一「富士山図」(「絵手鑑」のうち)江戸時代・19世紀〈図3〉

酒井抱一「富士山図」(「絵手鑑」のうち)江戸時代・19世紀〈図3〉

最後に第五章では、まさに今の季節にふさわしい梅の名所・月ヶ瀬を描いた貫名海屋「月ヶ瀬探梅図」〈図4〉をはじめ、頼山陽や田能村竹田、鈴木芙蓉といった文人画の真景図の優品をご紹介します。さらに近代絵画からは、明治28年(1895)に京都で開催された第四回内国勧業博覧会で妙技二等を受賞した今尾景年「耶馬溪図屏風」を展示し、江戸時代の真景図から近代に至る、名所の描き方の変遷を御覧いただきます。

 

普段見慣れた景色やまだ見ぬ日本の風景がどのように描かれてきたのか。「富士山の見える美術館」で、時空をこえた旅をお楽しみください。

 

 

【会期】 2014年2月1日(土)~3月16日(日)

貫名海屋「月ヶ瀬探梅図」(「山水画帖」のうち)江戸時代・天保6年(1835年)〈図4〉

貫名海屋「月ヶ瀬探梅図」(「山水画帖」のうち)江戸時代・天保6年(1835年)〈図4〉

【会場】 静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区岡本2-23-1)☎03―3700―0007

【休館】 月曜

【開館時間】 10:00~16:30(入館は閉館30分前まで)

【料金】 一般800円 大高生500円 中学生以下無料

【関連リンク】 静嘉堂文庫美術館

 

列品解説

【日時】 2014年3月8日(土)、13日(木) 11:00~

 

「新美術新聞」2014年3月1日号(第1337号)5面より

 


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