【安曇野】 岸野圭作日本画展 点より線に

2013年08月15日 17:25 カテゴリ:日展

 

「草々安曇野図」 六曲半双 2011年

「草々安曇野図」 六曲半双 2011年

本年還暦を迎える日本画家・岸野圭作(1953年生まれ、日展評議員、日春展運営委員)の初の回顧展が日展出品作を中心に70点余りで、安曇野市豊科近代美術館で開催されている。安曇野にアトリエを構えて10年余り、今では同地に馴染み制作を続けている。

 

日本画の世界に興味を持ち始めたのは故郷、和歌山県御坊の中学生の頃に遡る。東京の美術学校を目差した時期もあったが、先輩画家の土屋禮一の紹介により日展の重鎮、加藤東一に師事、「今さら受験勉強をするのであれば写生の一枚でもしたらどうか」との言葉を受け、本格的に絵の道に進むこととなった。

 

76年、23歳になる年に日春展で奨励賞を受賞、同年に日展初入選を果たした。初期は身近な存在であった家族を中心に人物を描いた。その色彩表現はどこか、おどろおどろしい印象も漂うが「若き日の迷いや将来への漠然とした不安、時代の流れのようなものもあった」と回想する。

 

「しじま」 160×225㎝ 1980年

「しじま」 160×225㎝ 1980年

日展で特選を重ね、初個展を開き、瞬く間に過ぎた30代で、その表現領域は花や静物、山などへと拡がり、40代では「色とはいったいなんだろう」と色を墨に置き換え、色の可能性をモノクロームの世界に求め制作をした。

 

現在の色彩豊かな、構成的で装飾的な世界が強まったのが50代になった頃。安曇野にアトリエを構えた時期そのものであった。それから10年、自然が日常となりこれまで蓄積された人物、植物など、それぞれの生命観が一体となり色彩とともに新たな世界が開花した。

 

「因果律がある以上、原因があって結果があるのではないでしょうか。先のことは分りませんが、今は絵を描いていることが幸せだと思っています。自然体で成るように成れば」とサブタイトル《点より線に》への思いを述べた。

 

「雲錦日月図」 六曲一双 2007年

 

【会期】 2013年7月27日(土)~9月8日(日)

【会場】 安曇野市豊科近代美術館(長野県安曇野市豊科5609-3)☎0263-73-5638

【休館】 月曜、祝日の翌日

【開館時間】9:00~17:00(入館は閉館30分前まで)

【料金】 一般600円 高大生400円

【関連リンク】 安曇野市豊科近代美術館

 

「新美術新聞」2013年8月1・11日号(第1319号)1面より

 


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