[フェイス21世紀]:山田優アントニ〈洋画〉

2022年07月04日 12:00 カテゴリ:コラム

“肖像画”を問い続けて

 

アトリエにて=6月6日撮影=

アトリエにて=6月6日撮影=

 

「人物画は純粋に、描いても描いても描き足りない思いです」

 

静岡で3代続く肖像画を生業とする一族に生まれた山田優アントニ。

 

祖父と父が肖像画を描く姿を間近に見て育ち、自身も人物を描くことに強い愛着を抱くようになっていた。

 

《portrait♯9》 2022年 162.0×130.3cm

《portrait♯9》 2022年 162.0×130.3cm

 

だが、山田の描く人物画は伝統的な肖像画とは趣を異にする。

 

こちらを見据えながらも超然とした目線、複雑な色彩の重なりが孕む謎めいた雰囲気、特定の誰かを感じさせない匿名性……
自らの出自に根差す人物画への思い入れによって描かれたその作品は、むしろモデルの個性を強調する肖像画とは対照をなしている。

 

アトリエ風景

アトリエ風景

 

高校と美大で本格的に油彩を学び、肖像に留まらぬ絵画の可能性に山田は意識を向けるようになった。
とくに印象派以降の近現代の大家たち――ゴッホ、ボナール、マティスなど興味を持った画家は片っ端から研究した。

 

数年前、モネ晩年の大作《睡蓮、柳の反映》の復元に携わった経験は貴重だった。

 

作業の過程で、巨匠のタッチやマチエールを追体験し、画家の抱くビジョンの強烈さに感銘を受けた。
さらに、それを観客と分かち合うことのできる説得力の強さに感服した。

 

《portrait♯8》 2022年 53.0×45.5cm

《portrait♯8》 2022年 53.0×45.5cm

 

偉大な作品を参照しつつ、山田は自らのビジョンを模索する。

 

特定のモデルは置かず、色合いやマチエールに納得するまで筆を動かす。時には描いた顔の上に違う顔を描き、人物の性別すら変えてしまう。
「絵の中で人物を作り上げていく」という山田の描き方は、肖像画とは何かを常に自問しているかのようだ。

 

左:《portrait #4》 2022年 53.0×45.5cm 右:《portrait #7》 2022年 53.0×45.5cm

左:《portrait #4》 2022年 53.0×45.5cm
右:《portrait #7》 2022年 53.0×45.5cm

 

家業に敬意を払い、将来は父の仕事を継ぐことを考えながらも、自己の表現を追求したいという思いで制作する山田にとって、現在の作品も模索の途上に過ぎない。

 

大事なのは、しっくりとくるビジョンを見出すプロセス。

 

貪欲に、ストイックに、試行錯誤は続く。

(取材:原俊介)

 

《frangments》 2021年 109.0×158.5cm(変形)

《fragments》 2021年 109.0×158.5cm(変形)

 

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山田 優 アントニ(Yamada Yu Anthony

 

1987年静岡県生まれ。2010年愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業。17年「人物に託す意思 山田優アントニ×川島優」(浜松市秋野不矩美術館)、22年MITSUKOSHI Art Weeks(日本橋三越)など出品多数。今後複数のグループ展への参加を予定。

 

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