[画材考] 日本画家:加藤ゆわ「彼女の文字」

2022年06月30日 11:19 カテゴリ:コラム

 

(web)のせてさん2

 

彼女はレバノン在住のアーティスト。普段は日本とアラビアの文字を使ったデザインを和紙に漆でプリントする手法で作品を発表している。彼女の名前はサレム・カーラ・レネさん。彼女のとても豊かでセンス溢れる文字が私は大好きだ。

 

私は時折イラストや簡単なデザインの仕事もしている。昨年、常磐津の唄い手である友人が音楽と美術を融合させた演奏会を行う「花鳥画に音楽をのせて」という会を立ち上げた。ロゴマークを作ろうということになり、私はシンボルマークの「鳥」を、彼女はロゴタイプ部分を依頼された。

 

メールで送られてきた彼女の‟花鳥画に音楽をのせて”の文字を見るうちに、私は「のせて」部分が女性に見えて仕方がなくなった。そこで、見えた通りに女性を描いて彼女に見てもらった。すると面白いと言ってとても喜んでくれた。

 

「花鳥画に音楽をのせて」第2回公演~花、四季~パンフレットより

「花鳥画に音楽をのせて」第2回公演~花、四季~パンフレットより


 
《Tone6 つむじ風》33.3×24.2cm

《Tone6 つむじ風》33.3×24.2cm


画家として「見つける」「見立てる」といった“発見”を大切にしている私にとって、文字を何かに見立てるのは心うきうきする作業のひとつだ。自分ひとりの思考では見ることのなかった世界を思いがけず垣間見ることが出来る。それは、彼女の文字が作品として美しいからこそ受けられるインスピレーションであり、味わえる楽しさである。

 

ご縁があって現在も別の依頼で彼女の文字と私の絵とでイラストを作成しているが、Zoomでの打ち合わせの際は息抜きも兼ねて彼女の文字を色々に見立て合って楽しんでいる。そして「この息抜きの時間に沸いてくるような発想で共同制作を重ねて、いつか本を作りたいですね」と夢を膨らませている。

 

 

 

 

 

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(web)加藤ゆわヘアキャップ
加藤 ゆわ(かとう・ゆわ)
1984年千葉県生まれ。2007年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業、11年同大学院美術研究科デザイン専攻描画装飾研究室(中島千波研究室)修士課程修了。修了後、14年まで同大学の教育研究助手を務める。とりとめのない情景に面白さを見つけ、主に日常的な女性の姿をモチーフとして絵画制作し、画廊や百貨店、アートフェアを中心に作品発表。最近はデザインとイラストの制作も行っている。
2023年12月7日~13日 Artglorieux GALLERY OF TOKYOにて個展開催予定。

 

【関連リンク】加藤ゆわオフィシャル・ホームページ

 


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