[通信アジア]大阪でアートが盛り上がりつつある:南條史生

2022年02月21日 12:00 カテゴリ:コラム

 

大阪中之島美術館外観。中央にあるのはヤノベケンジ彫刻作品。

大阪中之島美術館外観。中央にあるのはヤノベケンジ彫刻作品。筆者撮影

 

大阪でアートが盛り上がりつつある。

 

最大の出来事は大阪中之島美術館が開館したことだろう。建築家は遠藤克彦である。遠藤氏は2016~17年に開催されたコンペを勝ち取って、この大阪でも最も重要な美術館の設計を受け持った。

 

建築の外観は浮遊する黒い箱である。その意味ではモダニストと言うことが出来るだろう。地上からは基準階の2階に向かって緑のランドスケープが階段状に重なっていくが、その中央にはヤノベケンジの招き猫の姿のパブリックアートが立っている。入口は1階にもあり、歩道から入ると、そこには2階へ向かう中央階段が吹き抜けを昇っている。中央の吹き抜けは5階レベルまで続いており、その中を縦横にエスカレーターが架橋している。建物のコンセプトはパッサージュで入口ホールを表象する。

 

4階の階段脇コーナーには、ヤノベの《ジャイアント・トらやん》が鎮座している。私個人としては、六本木アートナイトの初回にメイン展示として火を噴いた作品なので、親しみを感じる。少し窮屈そうだが、やっと終の棲家を得たと言うところだろう。

 

建築はシンプルでダイナミック、歩いていくと視覚の変化も飽きさせない。基本的に自分の位置がわかりやすいという意味も含めて、観客に優しい美術館ということができるのではないだろうか。

 

美術館内部は”パッサージュ”が複雑に連なる。筆者撮影

美術館内部は”パッサージュ”が複雑に連なる。筆者撮影

 

最初の展覧会は「超コレクション展」と銘打たれているが、さすがに収集が始まってから30年が過ぎているので、充実している。6000点に及ぶ作品は欧米、日本の近代・現代美術、地元作家の作品と何でもあるが、一部は既存のコレクションを引き取ったり、作家の遺族から譲り受けたりして見応えがある。大阪ゆかりのグループ「デモクラート美術家協会」や「パンリアル美術協会」、「吉原治郎」「前田藤四郎」の作品群などが特筆される。今ではとても手に入らないような貴重な作品、特にモディリアーニ、佐伯祐三、フランク・ステラ、ジャコメッティなどが際立っている。

 

隣にはすでに国立国際美術館が地下に埋まる形で存在しているが、大阪中之島美術館の登場でやっと大阪を代表する美術の核が形成されたと言えるだろう。

 

さて、この美術館の開幕に合わせて大阪関西国際芸術祭が、1月28日から2月13日まで開催された。会場は船場の古いビルと、グランフロントの吹き抜け、サンワカンパニーショールーム、料亭「花外楼」など多様である。参加アーティストは鬼頭健吾、奥中章人、淀川テクニック、落合陽一、西尾美也、ミヤケマイ、釜ヶ崎芸術大学など多数。「アート×ヒト×社会関係をStudyする芸術祭」というコピーを掲げて問題意識を喚起した。

 

一方で、この芸術祭はアートフェアも包含していて、2月4日から6日まで、グランフロントの吹き抜け空間で郡裕美(建築家・アーティスト)の設計でユニークな会場を作り、アートフェアを開催した。会場の制約からギャラリーの数は少なかったが、アート市場の開発も重要だという問題意識を示したと言える。

 

また「クリエイティブアイランド中之島」は2月2日から13日まで、中之島のさまざまな施設を使ってトークセッションを開催し、大阪圏の新たな文化ネットワークの存在をアピールした。こうした動きは2025年の大阪万博やIRを見据えてのことだろう。

 

これまで文化的には無風地帯だった大阪に注目が集まり、文化に対する投資と蓄積がはじまるのではないだろうか。

 

芸術祭に参加した釜ヶ崎芸術大学のインスタレー ション。筆者撮影

芸術祭に参加した釜ヶ崎芸術大学のインスタレーション。筆者撮影

 


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