[画材考] 洋画家:山本佳子「画材との折り合い 油彩と不透明水彩」

2021年12月06日 12:00 カテゴリ:コラム

 

最近の描き始めの絵(ガッシュ)

最近の描き始めの絵(ガッシュ)

 

描きたい対象が風景であれ人物であれ、庭の花であれ、出会った瞬間それはほぼ完璧な絵のように見える。最初に受けたその鮮烈な感動を表現できればと思う。

 

私の場合、すんなりうまくいかないので足したり引いたりが自由な画材の方がいい。そういう意味で今、主に使う画材は油彩と不透明水彩(以下ガッシュ)に折り合いがついている。

 

長い間、形を変えずそこにある風景なら油彩でじっくり描きたい。そしてそういう絵なら白は重いシルバーホワイトを使う。油絵具は白ひとつとっても性格が違うこと甚だしく、興味が尽きない。

 

《パリの街角》33.3×33.3㎝ こだわっている白のうち、シルバーホワイトを使用

《パリの街角》33.3×33.3㎝
こだわっている白のうち、シルバーホワイトを使用

 

そしてもう一つ、使うほどに魅力を感じる画材がガッシュ。例えば季節の花など姿(新鮮な印象)が変わらない内に描き上げることができる。白は美しく艶のあるジンクホワイト。油彩では弱点を持つジンクは水彩ではよいところしかない。

 

はるかに難しい透明水彩を描く人が多いのはなぜだろう。ガッシュは透明水彩を描いている人も含め、絵を描くすべての人に勧めたい。水張り不要。白を味方に修正が効く。失敗は失敗にならず描きながら修正できる。乾きが早い上、乾かずとも進めることができる。途中で絵を描くことから離れなくて済むのだ。そして正解を何となく含むような感じで描き進められるのも魅力だ。白も黒も色を作るのに一役買う。中間色を含め好きな色が混色で作れることは素敵なことだと思う。灰色も、濁って見える色でさえも自由に使える。揺れていて許される。

 

曖昧ではっきりしないものの中に答えがあるかもしれない。そういうところにむしろ日本人の私は惹かれるようだ。

 

《舞台裏》40.9×31.8㎝

《舞台裏》40.9×31.8㎝

 

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山本 佳子(やまもと・よしこ)IMG_0145 (2)
1969年岡山県生まれ。現在一水会会員、日展会友。
川上一巳、吉崎道治に師事。94年岡山大学大学院修了後8年間県教職員を務め、画業に専念するため退職。
一水会展には92年初出品以後、新人賞、一般佳作賞、山下新太郎奨励賞、会員佳作賞受賞。また、日展では96年に初入選、2020年特選。
イタリアを中心に欧州への取材を重ねながら、これまで岡山・東京で個展多数開催。
2022年1月5日(水)~17日(日)岡山市・アートスペース テトラヘドロンにて個展開催予定。

 

【関連リンク】山本佳子-絵描きの日常-

 


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