[通信アジア]北九州未来創造芸術祭ART for SDGsの開催:南條史生

2021年04月16日 12:00 カテゴリ:コラム

 

淀川テクニックの廃材彫刻《宇野のチヌ》2010年 Courtesy of the artist and YUKARI ART

淀川テクニックの廃材彫刻《宇野のチヌ》2010年 Courtesy of the artist and YUKARI ART

 

私がディレクターとなって北九州で開催される未来創造芸術祭を、コロナ禍に対する警戒態勢を取りつつ開催する。その背景として二つのことがある。

 

一つは2014年から文化庁が推進してきた東アジア文化都市が、2020年には北九州市に決まっていたことだ。またもう一つは1960年代に公害の街だった北九州が、主婦たちの市民運動でこれを解決、解消してきた歴史を評価されて、2018年にOECDのSDGsモデル都市に選定されたことだ。これはアジアでは初めてである。

 

ということで、北九州市は2020年に「北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs」という芸術祭の開催を予定していたのだが、コロナ問題で2021年に延期された。

 

最終的には今年4月29日から、5月9日までをコア期間として実施することになった。ただし北九州市立いのちのたび博物館では5月30日まで展示、北九州市立美術館では7月11日まで展示を実施する。

 

SDGsは2015年に国連総会で採択された2030年に向けた具体的行動指針で、17の世界的目標、169の達成基準、232の指標がある。この指標は極めて多様な問題に言及しているので、展覧会のコンセプトにはそぐわない。そこで特に持続可能性、環境保護そして社会的包摂(多様性)に焦点を絞り、展覧会を構成することにした。手前味噌だがこのテーマで展覧会を開催するのは、世界でも初めてではないだろうか。

 

作品は、海洋漂着ゴミを市民と集めてそれを彫刻化してしまう淀川テクニック、大地に人型の薬草園をつくる団塚栄喜、北九州イノベーションギャラリーで巨大な3Dプリンターを使って庭を造り出す田中浩也研究室+METACITYなどなど大きな屋外作品群、そして、いのちのたび博物館で新作を発表する落合陽一、北九州市立美術館で開催される「多様性への道」では、障がいのある方のためのオートクチュールの服飾デザイン、高齢者を描く写真作品、障害のあるアーティストの表現力豊かな作品など多様な展開を見せている。

 

新型コロナウイルスの制約があるので、大勢の人が入ればいいというわけではなく、ネット配信も活用して、内外の多くの人にこのような取り組みが行われていることを告知し、なるべく東アジア文化都市の試みとSDGsというメッセージの重要性を伝えたいというのが主眼である。

 

ところで、出張で台湾を訪問してきた。入国時に2週間の隔離期間を耐えなければならないのは他の国と同じだが、経験してみたら、意外と甘味な時間だった。究極のシンプルライフで、思い返してみると2週間があっという間に過ぎたような気がする。お勧めしないが、一生に一度は、体験して見るのも悪くない。台湾は、コロナをもっともうまく制圧した国なので、マスクをしている人はいるものの、皆一様に楽観的であった。

 

北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs メイン画像(ホームページより)

北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs メイン画像(ホームページより)

 


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