[画材考] 陶芸家:岡野圭治「変化を楽しむ…」

2019年03月04日 11:00 カテゴリ:コラム

 

登り窯の煙突と瀬戸内海

登り窯の煙突と瀬戸内海

 

自然豊かな岡山県備前市、瀬戸内の海をのぞむ工房で日々作陶しています。幼い頃から物を作るのが好きで素朴な土味の備前焼に魅せられ弟子入りし、その後独立してからはや20年の月日が流れました。1年に一度約2週間かけて焼く登り窯、その窯焚きにむけて土の用意、成形、模様つけなどの作業を行なっていきます。

 

備前の土と言っても採れるところで微妙に違い鉄分の多い土、少ない土、きめ細かい土、粗い土…作る作品や窯の焼くところによって土を使い分けます。学生時代版画を専攻していたこともあり、ロクロだけでなく粘土をいろいろなものに押し当てたり、表面を細かく面取りしたりして模様をつけます。模様をつけるのに石、木、葉など自然のものを使いますが、木を彫って木版画のような方法をとることもあります。表面に細かな凹凸をつけて登り窯で焼くと、焼成室内での置き場所や、薪の赤松の灰と炎の当たり方次第で、作品はキラキラとした焼き色に変化します。それは工房から見える穏やかな海に、月明かりが照らされ煌めいて見える風景のようです。

 

乾燥具合をみながら細かな模様を入れるのは思った以上に手間や時間がかかりますが、とても楽しい作業です。あまり考えすぎても良い模様になりませんので、穏やかな海を眺めながら自然を感じ、楽しんで模様をつけています。

 

毎日同じ景色をみていると、海、山、空はいろいろと変化していきます。自然の美しさには敵いませんが、作品にもいろいろと変化をつけ、楽しみながら制作できればと思っています。

 

「備前叩き長方皿」41×52×7㎝

「備前叩き長方皿」41×52×7㎝

 

(左)「備前角花入」径6×高22cm (右)「備前広口花器」径21×高22cm

(左)「備前角花入」径6×高22cm
(右)「備前広口花器」径21×高22cm

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岡野 圭治 (おかの・けいじ)DSC_0046
1972年大阪府生まれ、岡山県備前市在住の陶芸作家。93年に大阪芸術大学付属大阪美術専門学校を卒業後、備前焼作家の岡田輝氏に師事。97年イタリア各地を遊学後99年に独立、2002年に初窯を出す。16年には雪舟後裔天童第一座 七類堂天谿師より来遊合作の栄を授かり、2017年「玄鹿窯」(げんろくがま)を拝命、直筆大小陶印拝受 。以後「玄鹿」を陶号とする。
3月27日(水)~4月2日(火)日本橋三越本店本館6階アートスクエアにて個展開催予定。

 

 


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