[フェイス21世紀] : 山下耕平

2014年08月06日 09:30 カテゴリ:コラム

 

平面絵画への想い「顔」に込め

 

 

Gallery 58にて(7月10日撮影)

Gallery 58にて(6月27日撮影)

 

昨年第6回絹谷幸二賞を受賞し、「VOCA展2011」、「新世代への視点2013」に出品するなど若手作家として活躍著しい山下耕平。人間の「顔」に焦点をあて、その内面に潜む情念や感情と真正面に向き合うような作品が今、注目を集めている。

 

07年に佐賀大学教育学部デザイン専攻を卒業。その後は地元福岡に残り、ひたすら作品を描き続ける日々を送る。「子どもの頃から藤子不二雄や手塚治虫といった昭和の漫画が好きで、そのキャラクターを真似たり自分で考えたりしていました」。そのバックグラウンドが現在の「顔」の表現に繋がっている。「『人物』が自分のその時々の感情を一番託しやすいモチーフ。描き方についても色々なことを試しながら感情に一致する方法を決めていく」。具象とも抽象ともつかない山下の作風の多様さは試行錯誤の結果だ。

 

(左)「知らない道、迷走、時間がない」 アクリル、カラーインク、パネル 66.0×55.0cm 2014年
(右)「動機の銅鑼が鳴る」 アクリル、カラーインク、パネル 111×111cm 2014年

 

そんな山下が最も影響を受けたのが現代美術家の大竹伸朗だった。目指していたイラストレーターという仕事と自分の表現とのギャップに悩んでいた学生時代、東京都現代美術館で行われた大竹の回顧展「全景」(06年)と出会う。「大竹さんの作品が持つ『突破する力』や言葉に勇気づけられて、自分を表現する画家への道に進もうと決めました」。

 

大竹は四国に移り住み制作を続ける孤高の存在。そんなところも似ているのかもしれない。「地元で絵を描くということはとても大きな意味を持ちます。自分が生まれ育った環境で描いている自分、実家という内向きの環境に身を置くことが絵に影響を与えています」。

 

今後の目標はと問うと「作品をもっと創りたいです」との答え。そのシンプルな言葉に画家の全てが込められている。

(取材/橋爪勇介)

 

(左)「HOMEBOY」 2004年
(中)「ノラ」 2006-2007年
(右)「遠足前夜」 2006-2007年

(左)「ジュースの子ども」 アクリル、ペンキ、カラーインク、パネル 213.0×283.5cm 2009年
(右)「乾杯」 アクリル、ペンキ、カラーインク、パネル 228.5×295.0cm 2010-12年

 

山下耕平(Kohei Yamashita)

1984年兵庫県生まれ。2007年佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程デザイン専攻卒業。主な受賞に「佐賀県美術展覧会」佐賀県造形教育研究会賞(03年)、第6回絹谷幸二賞受賞(13年)などがある。これまで福岡のギャラリーとわーるや東京・銀座のギャラリー58での個展のほか、上野の森美術館「VOCA展」(11年)、熊本市現代美術館「九州アート全員集合展」(12年)に参加するなど精力的に作品発表を続けている。今後はギャラリーとわーるにて個展が開催予定(9月16日~28日)。

 

【関連記事】

第6回絹谷幸二賞に山下耕平氏 決まる

レポート「第6回絹谷幸二賞」贈呈式行われる

 

「新美術新聞」2014年8月1・11日号(第1351号)5面より

 


関連記事

その他の記事