[フェイス21世紀] : 谷保玲奈さん

2014年05月21日 14:33 カテゴリ:コラム

 

自然から得る感動を描く

 

谷保玲奈氏

大原美術館(倉敷市)のレジデンスプログラム「ARKO」2014年の招聘作家に決定、「平成26年度五島記念文化賞」では美術新人賞を受賞しスペインでの海外研修が決まるなど現在多方面から注目を集めている日本画家・谷保玲奈。

 

小学1年から中学2年までドミニカとボリビアで約6年間を過ごし、日本そのものに対する客観的な憧れがあった。現地では油絵を描いていたが、多摩美術大学で日本画を選んだのは「素材と色の美しさに感動を覚えたから」だと言う。

 

谷保の作品には花や動植物など生命体がモチーフとして多く描かれる。「端的に生きているもの、その形や色が好きなんです。そこにはミクロな視点でもマクロな視点でもある種の共通性を見出すことが出来る。私にも(同じ生きものとして)その共通性があるとすれば、自分からも発信できるはずなんです」そう語る表情は限りなく自然体だ。

 

また生命体が渾然一体とした有機的な作品には特徴的な色彩が宿るが「自然から学ぶことが多く、制作するたび感動を覚えますし、なるべくその思いを活かしたいと思います」とも話す。

 

「不死山」2013年

 

5月から3ヵ月間は「現在の自分を定着させるような大作を描く機会が欲しくて応募した」という倉敷滞在が始まる。

 

その後はすぐにスペインへ。現地では「美術解剖学を学びたいというのが大きな目的の一つ。解剖しながらデッサンできる環境に身を置きたい。それに出来るだけ多くの博物館を見て回りたい」とプランを語った。

 

「(ARKOと五島記念文化賞が)決まった時は驚きましたが『今はこれをやりなさい』と言われているんだなと思います。どうにかして自分の作品をもっと良くしたいと思っていたので(倉敷やスペイン滞在は)とてもいい機会です。これからの自分、ちゃんとした作家としての自分に期待されていると思って頑張りたい」晴れやかな表情には確かな決意が宿る。

(橋爪勇介)

 

「血が泣いている」

「血が泣いている」

谷保玲奈(Reina Taniho)さんプロフィール:

 

1986年東京都生まれ。2010年多摩美術大学日本画専攻卒業、12年同大大学院美術研究科絵画専攻日本画領域修了。主な受賞に第10回佐藤太清公募美術展特選(10年)や日経日本画大賞入選(12年)など。アートスペース羅針盤や小林画廊での個展のほか、Art Taipei(12・13年)、アートフェア東京(13年)などにも参加。13年には長野県・佐久市立近代美術館に大作が収蔵されるなど近年ますます精力的な活動を見せている。大原美術館のレジデンスプログラム「ARKO 2014」の招聘作家として5月頃から倉敷に滞在し、8月8日(金)~9月28日(日)まで作品が公開予定。五島記念文化賞の海外研修では10月より1年間スペインに滞在する。

 

「新美術新聞」2014年5月1・11日号(第1343号)5面より

 

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