[フェイス21世紀] : 高松和樹さん

2013年12月18日 13:47 カテゴリ:コラム

 

100年先へ―現代の姿を記録したい

 

「人形ダカラ世ノ中ニ対スル不満ハ有リマセン。」(左)、「ヨリドコロ」(右)

「人形ダカラ世ノ中ニ対スル不満ハ有リマセン。」(左)、「ヨリドコロ」(右)

 

白とブルーブラックのモノトーン、平面の中に佇む立体的な少女たち。

 

高松和樹は昨年の独立展で80回記念賞と独立賞をダブル受賞、今年は会員推挙を受けるなどの活躍を見せるが、その作品は独立美術協会の中でも異彩を放つ。

 

3DCGソフトによって立体を“彫刻”し、ターポリンというテントなどに用いられる素材に野外用顔料をジグレー版画で出力、更にその上からアクリル絵具で手彩色を施す。この独自の手法を生み出すきっかけとなったのは大学在学時の金井訓志氏によるCGを画材とした特別講義だ。「絵画は絵具と筆で描くものと考えていた僕にとっては衝撃的でした」。その後はデジタルとアナログを併用したハイブリッドな手法と少女モチーフを自分の核に据える。

 

N.E.blood 21 vol.43 「高松和樹」展(リアス・アーク美術館 2010年)

N.E.blood 21 vol.43 「高松和樹」展(リアス・アーク美術館 2010年)

「女性は自分にとって未知の存在であり、ネット上では男性がなりすます姿としても使われる存在。その匿名性とそこに映し出される『現代っ子』が僕のテーマです」。2008年頃からはインターネット掲示板を読み、そこで受けた印象をコンセプトやタイトルに反映させていくという独特のスタイルも確立していく。

 

しかし現代のテクノロジーを駆使した作品と公募団体への出品との間にギャップも感じるのではないだろうか。「公募団体は技術を学ぶ場所です。ベテランの作家たちから技術を学びたい。また縦の繋がりがあるので『現代』に対する多面的な視点も得られます」。

 

海外での作品発表も目立つが、「その際も独立展で学んだコンセプトの重要さと技術力がそのまま説得力として活かされています」。

 

「僕は現代を記録したい。100年先の人々が見たときに、時代の断片が分かるような作品を作っていきたい」そう語る高松の眼は常に今現在を見つめている。その作品は後世の人々に何を伝えるだろうか。

 

(橋爪勇介)

 

 

第81回独立展会場にて(10月28日撮影)

高松和樹(Kazuki Takamatsu)さんプロフィール:

1978年宮城県仙台市生まれ(仙台市在住)。2001年東北芸術工科大学美術科洋画コース卒業、2002年東北芸術工科大学美術科洋画研究生修了。2002年以来毎年独立展に出品している。個展のほかグループ展にも多数参加し、2013年にはベネチア・ビエンナーレの関連企画「Imago Mundi」にも参加。またニューヨークのグッゲンハイム美術館ミュージアムショップでタイアップ商品の販売が予定されているほか道尾秀介氏の著書「花と流れ星」の装画を手掛けるなど国内外を問わず幅広く活動を展開。今月にはイタリアでグループ展に参加、2014年にはアメリカとカナダで個展開催予定、また国内ではアートフェア東京2014にギャラリー戸村より出展する予定。

 

【関連リンク】 高松和樹オフィシャルサイト

 

「新美術新聞」12月1日号(第1330号)9面より

 


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