[ときの人] 森佳子さん 森美術館理事長

2013年06月19日 13:04 カテゴリ:コラム

 

撮影:川島保彦

アートの楽しさを人々の日常へ

 

 

今春、フランスよりレジオンドヌール勲章シュヴァリエを受章した。森美術館の開館10周年に花を添える今回の叙勲を「美術館の活動に対して授与されたもの」と考えているという。「昨年亡くなった森稔は“都市づくり”の中心には文化が必要だと情熱的に言い続けてきました。その象徴として森美術館を作り、その活動が海外から評価された。今は森への感謝とともに、ひとつの恩返しが出来たかなという思いです」。

 

複合商業施設の六本木ヒルズ最上階というロケーションや国内初の外国人館長起用、現代アート中心の展示など、実験的な数々の試みは枚挙にいとまがないが、常に世界的な視座に立ち、新たな美術館像を打ち出してきたこの10年の功績は計りしれない。

 

 

 

「今、アート界で何が起こっているのか、その最先端を観せられる場にしていきたい」と話す森さん。開催中の「LOVE展」では、近現代美術の流れを総括しながら「初音ミク」現象など先鋭的な動向を紹介。「これもアートなの?」と訝りながらも、楽しむ自分がいることに気付かされる。

 

「六本木を文化発信都市に」と、世界におけるトップスタンダードな美術館を目指す。その根源にあるのは「アートは楽しい」という思い。何よりもまずアートの楽しさが伝わる提案を。そこに森美術館“らしさ”があるのだろう。

 

 

 

「新美術新聞」2013年6月11日号(第1314号)1面より

 

 


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