来期に向け 淺木正勝東京美術倶楽部会長に聞く

日本の美術界を代表する日本画・洋画・工芸分野の現存作家126名による新作展、第15回「伝統からの創造 21世紀展」が東京、大阪、京都、名古屋、金沢5都市の巡回を終え、主催する東京美術倶楽部より各美術倶楽部加盟の美術商による落札結果が発表された。併催された、新進気鋭の現代美術作家 (絵画・工芸) 32名による新しいアートの発信「東美ミュージアム展　TOBI WAVE」の落札一覧も発表された。

今回の「21世紀展」は日59、洋31、工36の計126作品の落札、総額は2億3980円(表1)。落札高額ベスト10では、トップは昨年に引き続き洋画の森本草介「青衣(カンタータ)」(10号)が2900万円を付けた。2番手には工芸の樂吉左衞門「焼貫黒茶碗」の1220万円、続いて千住博、絹谷幸二、田渕俊夫の絵画3人がそれぞれ1千万以上の高額落札となった。さらに手塚雄二、中島千波、宮廻正明、森本純、村上裕二、塩谷亮と人気作家が名を連ねた。また「TOBI WAVE」は計2003万2千円だった(表2)。

この間、「21世紀展」を主導してきた淺木正勝東京美術倶楽部会長に来期に向けた新たな改革について現段階での構想の一端をお聞きした。

―21世紀展の落札結果、内容について

淺木：落札総額全体として昨年比900万円余の減となりましたが、出品作家の数が4名減っている割にはまずまずの結果ではなかったかと思います。前回、高額になった作家でも今回都合により出品できない方も何名かおられたりしました。

淺木正勝東京美術倶楽部会長

売上金額もさることながら作品の内容、質が大事です。最初の34回にわたり開催された『五都展』、次の15年続けた『現美展』、そして今年までの『21世紀展』は五都の美術倶楽部が毎年行う中心的な催事です。私はそのいずれにも関わり、実際、現美展以降はその改革に先頭になって取り組んでまいりました。『21世紀展』でも当初のように情熱を燃やして新鮮で意欲的な作品を描いて頂ければ、それは一般のコレクターの方々にも影響を及ぼします。もちろん懸命に努力して素晴らしい作品を描いてくださる作家の方も居られますが、作家と美術商が同じかたちで10年以上も経つと、ともすれば作家は絵の内容がマンネリ化に陥りやすいものです。」

―「TOBI WAVE」について

淺木：選出された新鋭作家の中にはすでにいくつもの画廊で活躍している方、次の21世紀展に代わる新企画展に推薦したい有望な若手もいます。全体がまだ終わったばかりで現時点では今回の32人のうち何人がとかはわかりません。また、このメンバー以外にも推薦したい作家はいるでしょう。ただ今回は時間的にあまりない中で企画せざるを得なかったという事情がありました。

―『21世紀展』は、来年どういう名称、形になるのでしょうか

淺木：まだこれからの話です。出品作家はかなりの入れ替えがあっても、大幅に減少することはないでしょうし、全国5都の美術倶楽部を巡回する形は変わりません。やはり東京が中核ですが、京都・大阪・名古屋・金沢には組合組織、立派な建物・歴史、特色があります。それらが一体となり美術業界の中心になっていますから5都の結束、交流、繋がりをもって新企画展を開いていく方向は、私としては変えたくありません。

(表1)第15回伝統からの創造　21世紀展　落札価格高額ベスト10

(表2)「TOBI WAVE」落札価格表