【インタビュー】日動画廊副社長・長谷川智恵子さんに聞く―日仏文化協力への思い

2014年04月25日 14:56 カテゴリ:最新のニュース

 

 

「フランスには綺麗な本を家族や友達にプレゼントする習慣があるんです」と話す長谷川智恵子さん

「フランスには綺麗な本を家族や友達にプレゼントする習慣があるんです」と話す長谷川智恵子さん

『LES GRANDS MAÎTRES DE L’ART MODERNE ET CHIEKO HASEGAWA』(モダンアートの巨匠たちと長谷川智恵子)を出版

 

東京・恵比寿にある公益財団法人日仏会館(松浦晃一郎理事長)が3月創立90周年を迎えた。日動画廊副社長、公益財団法人日動財団 笠間日動美術館副館長として日仏文化協力に尽力され2009年に仏政府よりレジオン・ドヌール・オフィシエ勲章を受章された長谷川智恵子さんに、日仏文化協力への思いや昨年刊行されたフランス語版著書などについてお聞きした。

 

日仏文化協力90周年を迎えてのご自身の思い出や印象深い出来事は。

 

長谷川 今年は「日仏文化協力90周年」ですが、これは日仏会館ができてから90周年ということです。フランスとの交流はさらに長く、日動画廊が今年創業87年ですから、その3年前に日仏会館ができたということになります。

 

私にとってのフランスは、昨年40周年を迎えた日動画廊のパリ支店ができたことで一層深まったと感じています。もともと藤田嗣治先生が創業者の長谷川仁に「パリに画廊を出すのはセーヌ河にお金を捨てるのと同じだ」とおっしゃったのだそうです。義父はそれを守ってフランス進出を考えていなかったようですが、1970年代にフランスからの輸入作品――特に印象派からエコール・ド・パリの作品を日本のお客様にお買い求めいただく機会が非常にふえて、どうしても情報収集や連絡場所が欲しいということで、たまたま画家の息子さんがやっていた画廊を売りたいということで求めました。

 

クロード・モネ「曇天のウォータールー橋」1904年65.0×100.0cm公益財団法人日動財団蔵

クロード・モネ「曇天のウォータールー橋」1904年 65.0×100.0cm 公益財団法人日動財団蔵

それからフランスで画家とのお付き合いが直に始まり、さらに創業50周年のときにピカソ展を読売新聞社と企画しました。東京都美術館を皮切りに、笠間でも小さい規模で展示をしましたけれども、ピカソの息子クロードさんに言われて、当時のソビエトにもピカソ作品を借りに行ったのです。そうしましたらフランスの印象派からエコール・ド・パリまで、ものすごくいい作品をたくさん持っていらっしゃる。それ以降、フランス絵画をロシアの美術館から日本に持ってくる、ということを通して、私とフランスとの関わりは非常に強くなったと思います。

 

2007年には当時理事長をしていた日本洋画商協同組合の創立50周年と東京藝術大学創立120周年の記念として「黒田清輝から藤田嗣治まで~パリに学んだ洋画家たち~」展という展覧会をパリの日本文化会館で開催していただきました。この経験をとおして、日本近代洋画の歴史は、フランスに行って勉強した画家たちが日本に帰ってきて、日本人の近代洋画をつくったのだとつくづく思いました。

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール「褐色の髪の浴婦」1909年91.8×73.0㎝ 公益財団法人日動財団蔵

ピエール=オーギュスト・ルノワール「褐色の髪の浴婦」1909年 91.8×73.0㎝ 公益財団法人日動財団蔵

日本人とフランス人の気質や感性についてはどう感じていますか。

 

長谷川 フランス人は「わび・さび」や「間」というもの――昔シラク大統領がお相撲を好きだったのも、あのぎりぎりの間、お能の間、そういう感覚的なものを理解しようとする国民性なのです。わからないで片づけないで、そういう日本人の感性を受け止めてくれますし、自分たちもその世界を知りたいと思って下さる。モネやルノワールも一時ジャポニスムで、浮世絵から始まる日本文化というものに興味を持ったように、日本人の感性とフランス人の感性はどこか共通項があるように思います。

 

フランスは、核やユーロのことでも非常に厳しい国ですが、こと文化に関しては、一般商品にかかる消費税率は19%ぐらいですが、美術品に関してはついこの間まで5%台で、最近少し上がって7%になったかと思います。また著名な作家が亡くなった後、アトリエを美術館としてパリ市が管理するなど、文化を擁護するという姿勢は、日本よりはるかにシステム化されているように思います。

 

『LES GRANDS MAÎTRES DE L’ART MODERNE ET CHIEKO HASEGAWA』の出版経緯や内容をお聞かせ下さい。

 

長谷川 もともと朝日ソノラマから1981年に出版され絶版となっていたものが2010年に講談社より『「美」の巨匠たち』として復刻されました。これを見たフランスのEdition Chêne社からフランス語で出版したいと打診され、昨年の秋に刊行されました。しかし既にここに掲載されている作家の多くがこの世にはいらっしゃらないわけです。たとえばシャガール、フランシス・ベーコン、セザールやサルバドール・ダリとか、ミロなど、その時代のトップの人たち30人に会ってインタビューをさせていただきました。ですから今から考えると私はすごく幸運だったと思うのです。

 

〈 2 〉に続く

 

 


関連記事

その他の記事