美術愛住館で「野見山暁治展 100年を超えて」 開催中

2022年02月14日 09:58 カテゴリ:最新のニュース

 

1月25日プレス内覧会にて野見山暁治氏

1月25日プレス内覧会にて野見山暁治氏

 

新宿区愛住町において池口史子(洋画家)・堺屋太一(小説家)夫妻が暮らした建物(安藤忠雄設計指導)を全面改装した私設美術館「美術愛住館」が2019年池口の母校である東京藝術大学に寄贈されて以降初となる展覧会が開幕。

 

自身東京藝術大学の前身、東京美術学校を卒業し、藝大名誉教授でもある101歳の洋画家・野見山暁治(1920年福岡県生まれ、文化勲章受章者)の新作を中心とした80年にも及ぶ画業を展望する構成となっている。

 

1階フロアには油彩15点が、階段を上ると目の前にペン画による紙人形3点(写真右上)が展示されている。1956年最初の妻・陽子を亡くし筆を持てない時期の作品。パリの部屋を訪れた友人は、首吊りのように見える紙人形を見て驚いたという。

階段を上ると目の前にペン画による紙人形3点(写真右上)が展示されている。1956年最初の妻・陽子を亡くし筆を持てない時期の作品。パリの部屋を訪れた友人は、首吊りのように見える紙人形を見て驚いたという。

 

1階フロアには一昨年前から今年にかけて描かれた新作の油彩15点が並び、悲喜交々を包含しながら100年という年月を生きてきた人間の力強さ、うつくしさを湛え胸に迫る。紙人形3点と水彩12点を主体とした過去作品を展示する2階フロアでは普段目にする機会の少ないペン画などから制作した時代時代の心の機微を窺い知ることが出来るだろう。

 

「描いているときりがない。いつまでたってもこれでいいと手放すことができない。だから変な話、取り上げられない限り描いている。ということは、やめどきがわからなくなってきたということ。それは、いつやめてもいい。つまり絵というものはそういうもの。いつやめても同じことだなあ。」

 

炭鉱地帯に生まれ育ち、24時間3交代制で労働する荒っぽい大人たちを見つめながら、畏れ、逃れ、「本当のところ、未だに絵描きだとは思っていない。絵描きという職域は、この世を欺く隠れ蓑だとは分かっている」と、描き続けた野見山の内奥には、幼き頃見上げた煌々と明りの消えぬボタ山が未だ聳えているのだろうか。
 
「ぼくは一生かかっても美しいひととか、貴婦人とか、雅やかなそういうものは描かないと思いますね。」

 

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今展を通して鑑賞者は、長き歳月の果て多くの人々の生と死を反芻する画家の透徹の想いを感じ取ることができるはずだ。

 

【展覧会】─堺屋太一記念 東京藝術大学 美術愛住館 寄贈記念─ 野見山暁治展 100年を超えて

【会期】2022年1月26日(水)~3月27日(日)

【会場】美術愛住館(東京都新宿区愛住町2―5)

【TEL】03―6709―8895

【開場】11:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)

【休館】月・火曜(※3月21日(月)は開館)

【料金】一般600円、学生(学生証提示) 400円

【関連リンク】美術愛住館

 

 


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