【文化財】 平等院鳳凰堂 平安の姿に復元へ

2013年08月16日 11:12 カテゴリ:最新のニュース

来春4月から一般拝観を再開

大修理終了後のCG画像を公開

 

京都府宇治市の世界遺産・平等院(神居文彰住職)と京都府教育委員会は、7月9日、昨年9月から保存修理を進めている国宝(建造物)の平等院鳳凰堂(中堂ほか3棟)を平安時代の優美な姿に復元する、と発表した。同時に、今回の平成修理事業終了後のコンピューターグラフィックス(CG)画像を公開した。修理完了後の鳳凰堂は、2014年4月の公開を予定。

 

 

修理前の平等院・外観

修理前の平等院・外観

鳳凰堂は1053(天喜元)年の創建。約50年後の第1回修理で当初の木瓦葺から河内向山系の総瓦葺に改修された。鎌倉時代を経て、室町時代に鬼瓦の取り替えを実施。1670(寛文10)年、正面中央扉の取り替え等が行われた。そして1902(明治35)年、明治修理が着手され、軒瓦文様の統一などがあった。その後の昭和修理等を経て、1998(平成10)年から6年に渡り庭園保存整備が行われた。ほぼ50年に1度修理があった。

 

今回の平等院鳳凰堂の保存修理事業は中堂、両翼廊、尾廊の屋根葺き替え・部分修理・塗装修理で、期間は2012年6月~2014年9月。中堂・両翼廊は14年3月に完了予定。完了まで建物は素屋根で覆われ、いま内部は拝観停止中である。総事業費は約4億円。昨年9月に修理発遣式(起工式)があり、順次各工事が行われ、現在は屋根瓦葺き等を実施中である。これから順次、丹土(につち)塗装の作業に移る。

 

修理工事完了後の想定CG画像

修理工事完了後の想定CG画像

平等院によると、修理内容のポイントは3つ。①軒瓦を第1回修理時の河内向山系の文様に変更、瓦の表面は燻(いぶし)をかけない古色仕上げ。②外部赤色塗装を変更し、柱を含む建物下部まで丹土塗装(酸化鉄系の顔料)とする。③鳳凰等には金箔押しを行う。

 

今回の修理は現状維持を基本方針としているが、昭和期の修理・庭園保存整備で各部を復原整備してきたことから、可能な範囲で旧形式・仕様に復旧される。修理内容は、文化庁と協力しつつ、学識経験者で構成される修理委員会(委員長=齊藤英俊・京都女子大学教授)の学術的知見を得ながら決定されたという。

 

神居文彰・平等院住職は「鳳凰堂は新しく生まれ変わります。調査で判明した最も古い形を応用しての復元的保存処置を含むものです。外装は、酸化鉄系の落ち着いた赤色を地面まで施し、垂木先金物や鳳凰は、鍍金が押され直します。瓦は、燻を使用しない古色瓦となります。濃緑の連子、漆喰の白色など色彩が伸びやかに調和します。平安時代がいかに現代日本の美意識の基本であったかが再確認されることでしょう」と強調する。

 

【関連リンク】 平等院

「新美術新聞」2013年8月21日号(第1320号)3面より

 

 


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