[フェイス21世紀]:久野 彩子〈工芸〉

2022年05月30日 12:00 カテゴリ:コラム

”〈都市〉と〈自然〉を「金継ぎ」する”

 

久野 彩子

久野 彩子

 

スクラップアンドビルドを繰り返し、拡散する〈都市〉のダイナミズム。鋳金作家・久野彩子はずっとそのありように魅了されてきた。

 

生粋の東京生まれ、東京育ち。
子どものころからSFに親しんだ久野にとって、無機質な高層ビルや工場は自然よりも身近な存在。
通学路の道すがら、固い鉄が火花を立てて変形する鉄工所の現場を観察するのが密かな楽しみだった。

 

工業デザインを学ぶために進学した美大で、金属を自由に細かく成形できる鋳金技法と出会い、その面白さに目覚めた。
技法について詳しく学んでいくうち、大量生産品や工業製品で利用されるイメージを覆す軽い鋳物を作りたいという思いが芽生える。
ずっと愛着を抱いてきた〈都市〉と鋳金がそこで結びついた。

 

アトリエ風景(5月9日撮影)

アトリエ風景(5月9日撮影)

 

蝋で作ったパーツを埋没し鋳型を作り、真鍮などの銅合金を注いで鋳造したパーツを組み合わせる。造形は金属を流し込めるギリギリの細さにこだわり、制作の過程で生じた綻びさえも柔軟に取り込む。

 

そうして形作られる久野の作品は、ゴミゴミとした〈都市〉のイメージを肯定的なものに変え、俯瞰したり遠くから眺めたりした街の諸相を凝縮させる。

 

左:《skyline-TOKYO-》(部分) 2019年 15.0×496.0×4.5cm アルミ青銅・ブロンズ 右:《transform-hemisphere-》 2018年 46×46×30cm アルミ青銅・ブロンズ

左:《skyline-TOKYO-》(部分) 2019年 15.0×496.0×4.5cm アルミ青銅・ブロンズ
右:《transform-hemisphere-》 2018年 46×46×30cm アルミ青銅・ブロンズ

 

そんな久野にとって、街から人気の消えたコロナ禍は衝撃だった。

 

「人間の造り出すものはなんて儚くて、あっけないのだろうと思いました」。
一方、都会では触れてこなかった〈自然〉を見つめる機会が増えた。自然の雄大さを知ると同時に、その中にポツンと人工物が共存するイメージの面白みにも気づかされた。

 

〈都市〉と〈自然〉。

 

対立する二つの概念を繋ぎ合わせる装置としての金属を、久野は模索している。
思い描くのは欠けた部分を修理する“金継ぎ”のような作品。

 

異なるもの同士を結び付け、新たな関係性を構築する鋳金―――
誰もしたことのない表現を目指して、久野は挑み続けていく。

(取材:原俊介)

 

《core》 2021年 32×42×39cm 洋白

《core》 2021年 32×42×39cm 洋白

 

《dawn》 2021年 12.5×12.5×29cm 真鍮・レジン・モルタル

《dawn》 2021年 12.5×12.5×29cm 真鍮・レジン・モルタル

 

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久野 彩子(Kuno Ayako)

 

1983年東京都生まれ。2010年東京芸術大学大学院美術研究科工芸専攻(鋳金)修士課程修了。14年SICF 15オーディエンス賞、16年SHIBUYA AWARDS 2016大賞など受賞多数。金沢21世紀美術館にて5月21日㈯~10月16日㈰開催の「コレクション展1 うつわ」に出品中。

 

【関連リンク】久野彩子のページ

 


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