[画材考] ガラス工芸作家:石田知史「パート・ド・ヴェール」

2018年05月01日 10:24 カテゴリ:コラム

 

左から香合《飛鳥路》、合子《風かおる》、香合《招月》

左から香合《飛鳥路》、合子《風かおる》、香合《招月》

 

パート・ド・ヴェールとは、フランス語でガラスの練り粉という意味がある。

 

名前だけでは分かりにくいが、いわゆる鋳造ガラスの一種である。一般的な鋳造のイメージと異なるのは、その石膏型を最終的には割り壊して、ガラスを取り出すので、1つの型から1つの作品しか出来ないところだ。起源は古代メソポタミア時代だが、ガラス技法の発展とともに途絶えてしまった。

 

私のルーツは、両親が図案家からガラス作家に転身したところに始まる。パート・ド・ヴェールの独特の質感に魅せられた両親は、稼業を続けながら研究に没頭する。京都で培った美意識を得意とした彼らは、この技法で和の工芸品を創りたいと思ったようだ。

 

ガラス学校を卒業した私の視線は、海外に向かい始める。両親のような「和のパート・ド・ヴェール」を目指している人は、当時誰もいなかったからだ。2年に及ぶ流浪の旅から、日本の美術の素晴らしさに気付いて、ようやく両親の背中から学ぶことを始めた。

 

長い努力が実り、2009年に父・亘が京都府指定無形文化財保持者に認められた。技法は、「鋳込み硝子」。日本の伝統技法と認められて、嬉しかった。今も3人で、図案家時代の資料に囲まれながら、現代的な作品に昇華して制作している。

 

私自身は、旅で見たモスクなどの美しさを取り入れたり、自然豊かな工房付近を散歩して、普遍的な美しさに胸を打たれたり。様々なインスピレーションが作品に影響を与えてくれる。

 

日本伝統工芸展への出品は、筥など比較的大きい作品を。年に1、2回の展覧会では、手元で愛でる作品も手掛ける。今年は、すでに秋の銀座和光の展覧会に向けて、制作と試行錯誤の日々だ。

 

左:合子《春の風》  右:筥《湖上夕照》

左:合子《春の風》  右:筥《湖上夕照》

 

鉢《交錯する青》

鉢《交錯する青》

 

 

石田 知史 (いしだ・さとし)

 

1972年石田亘・征希の長男として京都に生まれる。9月28日(金)〜10月8日(月)には和光本館6階和光ホールで石田知史・亘・征希パート・ド・ヴェール作品展が開かれる。

 

左より石田知史、征希、亘

左より石田知史、征希、亘

 

【関連リンク】ガラス工芸作家 石田知史・亘・征希

 

 


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