[フェイス21世紀] : 結城唯善さん

2014年01月09日 13:35 カテゴリ:コラム

 

繰り返す変化 貫徹する想い

 

 

2010年、高齢の父に道化師のイメージを重ねた寓意的な作品で、第96回光風会展および第42回日展に年度最年少入選、光風会展では奨励賞を受賞した。当時は倉敷芸術科学大学に通う20歳の画学生。「驚きましたが、おかげで多くの先生方と交流できて。それまでより、現実感をもって作品制作に取り組むことが出来るようになりました」と振り返る。

 

大学で指導を受けた田村鎮男教授は、技巧よりもむしろ“何故、絵を描くのか”という根源的な問いを投げかけ、自分と向き合うことを生徒に促す人物だった。その教えは「僕の考えの根幹をなすもの」だと言う。自らの内面を掘り下げる4年間を経て、現在は武蔵野美術大学大学院に在籍。絵画表現を研究する日々を過ごす。言うところ「一人美術史追体験」。なるほど、アトリエには多様な作品が並び、試行錯誤と変遷の経過を詳らかにしている。「現実に潜む夢のような部分を抽象し作品化したいと考え、絵画というメディアを選択し研究してきました。対象を探究する思考の蓄積が手作業だからこそダイレクトに反映され、言語化できない自分でも不可視なものが表現できると考えたからです」。評価された画風を変えることに不安もあったが「様式化されたものよりも、様式が出来る前夜の、ある種の切実さ、生々しさこそが絵画の魅力であるはず」と表情は清清しい。

 

「独り芝居―結城忠雄の像」 2010 162.0×130.3cm Oil on panel             「光の反映」 2013年 162.0×130.3cm Oil on canvas

 

光風会では、13年に会友に推挙された。今後も活動の軸は光風会展にあると話す。「時流に敏感であることも大切ですが、じっくりと沈思し表現を突き詰めることも必要だと思います。求道的で理知的な姿勢と穏健で滋味な品格の美しさを学びました」。

 

変化を厭わず、ひたすらに表現の本質を求め続ける結城唯善。生き生きとしたその眼差しが確信させる。絵画への、純一無雑の想いだけは変わることがないだろうと。

 

(取材:和田圭介)

 

結城唯善(Yuki Tadayoshi)さんプロフィール:

 

1990年東京都文京区生まれ。2008年に倉敷芸術科学大学芸術学部美術工芸学科美術専攻油画コースに入学、都会の喧騒から離れた自然豊かな土地で学ぶ。10年第96回光風会展光風奨励賞受賞、第42回日展入選(ともに同年度最年少入選)。現在、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース在籍、光風会会友。その画風は対象の再現を重視したものから表現主義的なもの、明暗に主眼を置いた自然主義的作品まで多様に変遷を続けている。個展、グループ展多数。今後は、1月16日~19日「平成25年度 武蔵野美術大学卒業・修了制作展」、1月29日~2月4日「第2回燁の会展」(松坂屋名古屋店)、2月19日~25日/3月3日~8日「第2回蒼翔会展(岡山展/東京展)」(岡山天満屋美術画廊/アトリエスズキ)に出品予定。

 

【関連リンク】 結城唯善 Tadayoshi YUKI

 

新美術新聞2014年1月1・11日合併号(第1332号)5面より

 


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