[画材考] 漆芸家 笹井史恵

2016年04月18日 10:00 カテゴリ:エッセイ

 

大子漆(だいごうるし)

 

 

私の漆作品は、ほとんどが朱色塗りです。朱色の漆があるわけでなく、漆樹から採取された樹液の生漆から、木の皮などのゴミや過剰な水分を取り除く精製をして飴色の透け漆=赤呂色漆にし、それに朱の顔料を混ぜて、上塗りに使っています。生漆の品質や精製の仕方や朱の顔料調合が、作品の仕上がりに大きく影響します。

 

私が大子漆と出会ったのは、2009年に催した茨城県つくば美術館での展覧会がきっかけでした。茨城県は、岩手県に次いで生漆生産量が2番目に多いですが、漆器生産地で無いため、あまり知られていませんでした。茨城県大子町観光課の方から、漆芸作家が大子漆を使って作品発表することで、大子漆を広めてもらいたいとのことで、漆掻き職人の飛田祐造さんが掻いた生漆を提供して頂きました。使ってみると、乾きも良く、透明感もあり、発色もよいので、それ以来、大子漆を使い続けています。

 

私は、飛田さんの掻いた生漆を精製するとき、すべて上塗り用の透け漆にしています。学生時代からお世話になっている京都の鹿田喜造漆店や堤淺吉漆店で、いつも私好みに精製して頂いています。これまで飛田さんから大子漆を数年ごとにまとめて購入していましたが、採取する時期や年によって漆の品質の違いもあり、古い漆と新しい漆を混ぜて使用すると使いやすいこともあり、飛田さんともご無沙汰になりがちなこともあり、今の手持ち分がなくなったら、毎年購入にしようと思っています。

 

 

 

笹井史恵 (ささい・ふみえ)

 

1973年大阪府生まれ。1998年京都市立芸術大学大学院美術研究科漆工専攻修了。2003–2004年ポーラ美術振3財団在外研修生としてタイ国滞在。2004–2005年ユニオン造形文化財団在外研修生としてタイ国滞在。2008年京都工芸美術作家協会展「第30回記念賞」受賞。2014年京都市芸術新人賞受賞。2015年京都府文化賞奨励賞受賞、タカシマヤ美術賞受賞。現在、京都市立芸術大学准教授

 

 

 

今後の主な発表は「Master Piece London 2016」6月30日~7月6日、The Royal Hospital Chelsea(英ロンドン)、「融合する工芸2016」11月30日~12月6日、高島屋大阪店6階美術画廊

 

 

【関連リンク】笹井史恵 公式HP

 


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