[フェイス21世紀]:今井 喬裕〈洋画家〉

2021年12月28日 11:00 カテゴリ:コラム

”時代の風を表現する”

 

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泰明画廊にて 11月26日撮影

 

ベラスケス、モディリアーニ、ハマスホイ――。今井の口から西洋絵画史を彩る名前が次々と飛び出す。いずれも私淑している作家たちだ。「卓越した技術で自律した世界を描くのが西洋絵画。私はこの伝統で勝負したいと思っています」。

 

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《Takt》2019年 72.7×53.0㎝

 

子どもの頃から絵を描くのが好きだった。美術系の高校に進学し彫刻や音楽など様々な作品を制作してきたが、たまたま見かけたカラヴァッジョ展のポスターに圧倒され、伝統的な西洋絵画に憧れを抱く。その後は多摩美術大学に進学。周囲の生徒が現代美術を志望する中、無我夢中で人物画を描き続けた。また大学在学中から白日会に出品し、写実画への知見を深めている。

 

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《短夜》2020年 24.3×33.4cm

 

とはいえ今井の絵画を写実画と断言すると少し面食らうかもしれない。ファンシーなファッションに身を包み、物憂げな眼差しで虚空を見つめる少女たち。その姿はどこか浮世離れしていて、おとぎ話の1ページのようでもある。しかし今井によると、これらの絵は全てモデルとの生きた対話を経て描出されるという。「何より重要なのは、モデルの人格や空気感。彼女たちの内面に寄り添いながら描いていきます」。服装や装飾、調度品――。画面に映るモチーフをくまなく吟味し、絵としての正解を探っていく。そして、全てが調和したとき作品はアンサンブルを奏ではじめる。「作品の中の世界がいずれ私の手を離れてくれることを願っています」。

 

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《Bears》2020年 72.7×72.7cm

 

西洋絵画の技法を駆使し、耽美的かつ幻想的な作品世界を構築する今井の絵画は、アニメや漫画といったポップカルチャーとの親和性も高く近年は海外でも高い評価を受けている。「写真と異なり絵画には時代や場所の空気感が凝縮されています。作品を通して現代の日本の美意識を伝えていくことができれば」。そう語る今井の眼差しはしっかりと時代の風を捉えている。

(取材:柴田悠)

 

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今井 喬裕(Imai Takahiro)

1986年群馬県生まれ、2009年多摩美術大学卒業。現在白日会会員。大学在学中の08年に白日会展にて初出品し、14年に会員推挙。10年に白日賞、16年にアートもりもと賞を受賞。また、百貨店や埼玉画廊中心に個展・グループ展を多数開催するほか、書籍の装画も担当。22年6月2日~7月24日に北海道札幌市のHOKUBU記念絵画館、7月5日~11日に札幌三越で個展を開催予定。

 

【関連リンク】今井喬裕 ウェブサイト

 


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