【ニュース】平成27年度 文化庁概算要求概要 決まる

2014年09月22日 12:45 カテゴリ:文化行政

 

第2次 安倍改造内閣 発足    下村文科相は留任

 

9月3日、第2次安倍改造内閣が発足した。下村博文・文部科学大臣(五輪担当兼務)は留任。文化庁では8月末、平成27年度概算要求の概要をまとめ発表した。「世界に誇るべき 『文化芸術立国』の実現~文化を起爆剤とする地域と日本の再生~」とし、対前年比17.6%増の平成27年度文化庁予算の要求・要望額1218億円(前年度1036億円)をまとめた。史上最大規模の2020年東京五輪の文化プログラムの実現に向けてである。要求概要のポイントを取材した。

 

27年度要求・要望額(カッコ内は前年度予算額)は1218億円、大きく分けた4項目では、1「豊かな文化芸術の創造と人材育成」229億円(198億円)、2「かけがえのない文化財の保存、活用及び継承等」527億円(444億円)、3「我が国の文化芸術の発信と国際文化交流の推進」40億円(28億円)、4「文化発信を支える基盤の整備・充実」399億円(334億円)。億円未満は略。

 

概算要求、及び第4次基本方針策定に向け、今春より文化審議会、文化政策部会では精力的に審議、検討を重ねてきた。9月1日まで文化芸術団体のヒアリングまでを終了。今後は、答申起草に向けた文化政策部会、ワーキング・グループの会合、新年明けの国民からの意見募集の後、4月上旬に答申。次期基本方針が4月下旬に閣議決定の運びとなる。

 

民間ファンドとの協働文化プログラムの試み。下村文科相(右から2人目)と尾崎元規・企業メセナ協議会理事長(同3人目)らが会談した=14年8月26日

民間ファンドとの協働文化プログラムの試み。下村文科相(右から2人目)と尾崎元規・企業メセナ協議会理事長(同3人目)らが会談した=14年8月26日

概算要求には2020東京オリンピック・パラリンピック競技会開催の決定が大きく影響している。オリンピックはスポーツと文化の祭典であり、「文化プログラム」の実施は開催国の義務であるとされる。『オリンピック憲章』にも、「大会組織委員会は短くともオリンピック村の開村期間、複数の文化プログラムを計画しなければならない。このプログラムは、IOC理事会に提出して事前の承認を得るものとする。(第5章・第39条) 」とある。事実、50年前の1964年東京五輪大会では能や歌舞伎の公演が開かれた。

 

過去最大規模の文化プログラムが実施されたのは、2012年の第30回ロンドン大会。開催時期は北京五輪終了時(08年9月)からロンドン五輪終了時(12年9月)、集中開催は12年6月21日(五輪開催1か月前)~9月9日(同閉幕日) の12週間。参加国・地域数は204で、五輪参加国・地域数と同じ。場所は英国全土1000箇所以上で開催された。イベント数は美術、音楽、演劇、ダンス、ファッション、映画、ワークショップなど17万7千件余。参加アーティスト数は40464人、そのうち6160が若手、806が障害者、総参加者数は約4340万人だった。日本の蜷川幸雄氏(演出家)も参加し、37か国による37の異なる言語で実演された「世界シェイクスピアフェスティバル」は実施プログラムの一つ。ロンドン五輪は大成功し、文化プログラム実施がその要因の一つとされた。

 

それが文化による国のイメージアップとなり、同市は12年以降も来訪者は減少していない。文化庁では、「五輪の都市で終わるのでなく、レガシー(遺産)が重要だ」との示唆をロンドン関係者から得た。

 

文化庁27年概算要求は、2020年に向けて史上最大規模の文化プログラムを目指した点が一番のポイントだ。2020年までの目標として、魅力ある文化プログラムを全国津々浦々で展開、そのための重点施策が3つ挙げられた。特に、文化プログラムに関しての①育成②環境整備③発信強化であり、その新規予算要求等に反映された。

 

①「育成」とは2020年までを見据えた事業の優先採択。地域の様々な魅力ある文化芸術の取組や担い手の育成への支援。例えば国際的な芸術祭、地域の音楽、踊りの公演等に37.5億円の新規要求。

 

②「環境整備」とは国・公立の文化施設における訪日外国人の受入環境整備。館内サイン、音声ガイド、展示解説などの多言語化対応、対応可能な人材の育成に30億円。「国立のアイヌ文化博物館(仮称)」」整備(20年開館予定)の基本設計・設置準備に3億1千万円。

 

③「発信強化」とは、各地域の文化資源の魅力の再発見や活用・発信を促すシンポジウムを全国6か所程度で開催に新たに3千百万円。額的には小さいが重要な施策だ。

 

省庁間横断による文化庁官公庁連携協定の調印式。青柳正規・文化庁長官(右)と久保成人・観光庁長官=13年11月20日

こうした「文化プログラム」の実施体制・内容は今後、五輪組織委員会、東京都、政府(文化庁、外務省等)の三者において調整される。文化庁では2020年まで5つの戦略を練る。第1が、関係省庁が一体になっての文化プログラムの展開。海外発信は観光庁、クールジャパンは経済産業省、食の文化は農林水産省、といった具合で縦割りの枠を超えた新戦略である。第2は、民間企業との協働による展開。文部科学大臣からの要請を踏まえ、企業メセナ協議会が文化プログラム支援のファンド「2021 美術・文化による社会創造ファンド」を構築した。ほかにも、地方公共団体・文化団体、そして全国の大学ネットワークによる文化プログラム等の戦略もある。そして30年までの目標として2020年を越えて真の『文化芸術立国』を実現すると共に、さらに日本の文化を求めて来日する外国人を倍増させるという大きな青写真が描かれている。

 

「新美術新聞」2014年9月21日号(第1355号)3面より

 

 


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