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定価:3,990円(税込) 送料:350円
体裁:A4判変型(29.7×22.5cm)/上製/720頁
監修:高階秀爾(大原美術館館長、東京大学名誉教授、文化功労者)
序 高階秀爾
本書は『日本の美 日本の四季』の「秋冬」編をなすもので、先に刊行された「春夏」編と合わせて、四季の変化にしたがってさまざまな姿を見せる自然の風景、風物を描き出した優れた絵画作品を紹介しようとするものである。内容は「春夏」編と同じく、この「秋冬」編においても、比較的遺品の多い中世末期から近世を経て、近代現代までにいたる時代を対象とした。
自然と深く親しみ、自然とともに生活してきた日本人は、長い歴史のなかで、自然に対する畏敬と愛着の念に裏付けられた繊細で洗練された美意識を発達させ、文学や美術の世界で多くの優れた作品を生み出して来た。絵画の領域で早くから「山水画」「花鳥画」と呼ばれるジャンルが成立し、大きな分野を占めるようになったのはそのためである。現在残されている最も古い風景画の例としては、平安時代後期(11世紀後半)の《山水屏風》(国宝、京都国立博物館蔵)が挙げられるが、それ以前にも、自然の風物を描いた屏風絵などが存在していたことが、文献によって知られている。もちろん、中国においてはさらに古くから「山水」が描かれていた。日本の絵画は、さまざまなかたちで中国大陸からの影響を受け入れ、変容させながら、きわめて多彩で独自の自然表現による豊かな世界を築き上げて来たのである。
そのことは、西欧の絵画史においては、独立したジャンルとしての「風景画」や「静物画」が登場するのがほぼ17世紀以降のことであり、しかも19世紀後半にいたるまで、それは「神話画」や「宗教画」と比べて格の低い劣ったものと見做されていたという事情を思い出してみれば、やはり日本の絵画の大きな特質と言ってよいであろう。その表現様式もまた、きわめて独特である。西欧世界においても、四季を主題とした絵画は少なからず見受けられるが、それらはいずれも、プッサンの有名な《四季》連作に見られるように、春夏秋冬それぞれが独立した作品として描かれている。だが日本では、しばしば屏風や画巻などのひと続きの画面に、四季の自然の姿が描かれる。そこにも、移ろい行く自然に鋭敏な感性を働かせる日本人の美意識をうかがうことができよう。
本書の成立にあたっては、多くの社寺、美術館、所蔵家および関係者の方々に多大なご協力を頂いた。ここに改めて深く感謝申し上げる。また、作品解説を含め、優れた論考をお寄せいただいた執筆者各位にも、心から御礼申し上げたい。
2009年8月吉日
【構成】
序────高階秀爾
論文───四季に育まれた日本の文化と絵画─河野元昭(秋田県立近代美術館館長、東京大学名誉教授)
論文───自然──変幻の秘密─酒井忠康(世田谷美術館館長)
論文───浮世絵に見る江戸の四季─永田生慈(葛飾北斎美術館館長)
グラフ1─秋冬を描いた近世までの名作30選〈カラー〉 高階秀爾選 (解説付)
グラフ2─秋冬を描いた近現代の名作50選〈カラー〉 高階秀爾選(解説付)
グラフ3─現代画家が描いた秋冬431選〈カラー〉
●物故43選(編集部選・解説付)
●日本画161選(自選・エッセイ付)
●洋画227選(自選・エッセイ付)
論文───名筆の四季観 飯島太千雄(書道史家)
論文───「現代書」の四季 田宮文平(美術評論家)
グラフ4─現代書に見る四季68選〈カラー〉
●現代書家 I 物故19選(編集部選・解説付)
●現代書家 II 49選(自選・エッセイ付)
資料編──●「日本の四季」名作歳時記(467点・モノクロ)
●「日本の四季」美術展一覧
●日本の美「日本の四季」年表
秋冬を描いた近世までの名作〈カラー〉
高階秀爾選─所蔵美術館学芸員ほかによる解説付き30点
亜欧堂田善 「三囲雪景図」───────────────────個人蔵(板橋区立美術館寄託)
青木木米 「兎道朝暾図」(重文)───────────────東京国立博物館蔵
伊藤若冲 「動植綵絵 秋塘群雀図」──────────────宮内庁三の丸尚蔵館蔵
伊藤若冲 「動植綵絵 雪中錦鶏図」──────────────宮内庁三の丸尚蔵館蔵
歌川国芳 「忠臣蔵十一段目 夜討之図」(重要美術品)─────東京国立博物館蔵
歌川広重 「東海道五十三次 蒲原 夜之雪」──────────静岡県立美術館蔵
浦上玉堂 「凍雲篩雪図」(国宝)───────────────川端康成記念会蔵
尾形乾山 「花籠図」(重文)─────────────────福岡市美術館蔵(松永コレクション)
狩野探幽 「四季松図屏風」──────────────────大徳寺蔵(京都国立博物館寄託)
狩野内膳 「豊国祭礼図屏風」(重文)─────────────豊国神社蔵
狩野秀頼 「高雄観楓図屏風」(国宝)─────────────東京国立博物館蔵
賢江祥啓 「巣雪斎図」(重文)────────────────静嘉堂文庫美術館蔵
鈴木其一 「萩月図襖」────────────────────東京富士美術館蔵
住吉如慶 「秋草図」─────────────────────大倉集古館蔵
雪舟等楊 「秋冬山水図」(国宝)───────────────東京国立博物館蔵
雪村周継 「雪景山水図」───────────────────京都国立博物館蔵(谷口豊三郎氏寄贈)
俵屋宗雪 「秋草図屏風」(重文)───────────────東京国立博物館蔵
俵屋宗達 下絵・本阿弥光悦 書「柳下絵古今和歌色紙(秋かせに…)」サントリー美術館蔵
伝・俵屋宗達 「月に秋草図屏風」───────────────出光美術館蔵
伝・土佐広周 「四季花鳥図屏風」(重文)───────────サントリー美術館蔵
土佐光起 「春秋花鳥図屏風」─────────────────頴川美術館蔵
伝・土佐光信 「四季花木図屏風」(重文)───────────出光美術館蔵
鳥居清長 「雪のあした」───────────────────慶應義塾蔵(高橋誠一郎コレクション)
長澤蘆雪 「群猿図屏風」(重文)───────────────草堂寺蔵(和歌山県立博物館寄託)
長谷川等伯 「松林図屏風」(国宝)──────────────東京国立博物館蔵
円山応挙 「雪松図屏風」(国宝)───────────────三井記念美術館蔵
宮本武蔵「枯木鳴鵙図」(重文)────────────────和泉市久保惣記念美術館蔵
渡辺始興 「農夫図屏風」───────────────────東京国立博物館蔵
作者不詳 「西行物語絵巻」──────────────────サントリー美術館蔵
作者不詳 「秋冬花鳥図屏風」─────────────────サントリー美術館蔵
作者不詳 「秋草鶉図屏風」(重文)──────────────名古屋市博物館蔵
秋冬を描いた近現代の名作〈カラー〉
高階秀爾選─所蔵美術館学芸員ほかによる解説付き50点
麻田鷹司 「天橋雪後図」──────────────────何必館・京都現代美術館蔵
今村紫紅 「柿の秋」─────────────────────滋賀県立近代美術館蔵
入江波光 「志ぐれ」─────────────────────山種美術館蔵
岩橋英遠 「北の海(氷)」──────────────────相模原市蔵
上村松篁 「月夜」──────────────────────松伯美術館蔵
牛島憲之 「立秋」──────────────────────東京国立近代美術館蔵
海老原喜之助「群がる雀」───────────────────東京国立近代美術館蔵
岡 鹿之助 「雪の発電所」──────────────────石橋財団ブリヂストン美術館蔵
小川芋銭 「小六月」─────────────────────茨城県近代美術館蔵
奥田元宋 「秋巒真如」────────────────────広島県立美術館蔵
小野具定 「冬ざれ」─────────────────────練馬区立美術館蔵
堅山南風 「霜月頃」─────────────────────熊本県立美術館蔵
香月泰男 「冬の川(東)」──────────────────島根県立美術館蔵
金山平三 「大石田の最上川」─────────────────兵庫県立美術館蔵
鏑木清方 「薄雪」──────────────────────福富太郎コレクション蔵
加山又造 「冬」───────────────────────東京国立近代美術館蔵
岸田劉生 「道路と土手と塀(切通之写生)」(重文)──────東京国立近代美術館蔵
熊谷守一 「冬の夜」─────────────────────名古屋市美術館蔵
久米桂一郎 「秋景」─────────────────────久米美術館蔵
小出楢重 「枯木のある風景」─────────────────個人蔵
小絲源太郎「団地良夜」────────────────────東京都現代美術館蔵
小林清親 「海運橋(第一銀行雪中)」─────────────静岡県立美術館蔵
小山敬三 「浅間山初冬」───────────────────東京国立近代美術館蔵
斎藤豊作 「雪後の夕」────────────────────埼玉県立近代美術館蔵
榊原紫峰 「雪柳白鷺図」───────────────────島根県立美術館蔵
下村観山 「木の間の秋」───────────────────東京国立近代美術館蔵
杉山 寧 「野」───────────────────────東京藝術大学蔵
須田国太郎 「冬の漁村」───────────────────ふくやま美術館蔵
高橋由一 「品川海晏寺紅葉図」────────────────笠間日動美術館蔵(山岡コレクション)
高畠達四郎 「暮色」─────────────────────個人蔵
高山辰雄 「冬ゆく頃」────────────────────大分県立芸術会館蔵
竹久夢二 「秋のいこい」───────────────────夢二郷土美術館蔵
田崎廣助 「晩秋の九重山」──────────────────福岡市美術館蔵
寺崎広業 「秋苑」──────────────────────東京国立博物館蔵
冨田溪仙 「清水秋酣図」───────────────────京都国立近代美術館蔵
中村岳陵 「残照」──────────────────────静岡県立美術館蔵
西村五雲 「秋茄子」─────────────────────宮内庁三の丸尚蔵館蔵
橋本雅邦 「白雲紅樹図」(重文)───────────────東京藝術大学蔵
橋本関雪 「秋桜老猿」────────────────────川村記念美術館蔵
菱田春草 「落葉」(重文)──────────────────永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)
平福百穂 「朝露」──────────────────────宮内庁三の丸尚蔵館蔵
福井良之助 「黒部幻想(冬)」────────────────富山県立近代美術館蔵
福田豊四郎 「雪国」─────────────────────秋田県立近代美術館蔵
福田平八郎 「彩秋」─────────────────────山種美術館蔵
前田青邨 「京名所八題 清水」───────────────東京国立博物館蔵
牧野虎雄 「へちま」─────────────────────東京国立近代美術館蔵
丸山晩霞 「高原の秋草」───────────────────個人蔵
三宅克己 「秋の日」─────────────────────東京藝術大学蔵
山口華楊 「鶏頭の庭」────────────────────京都市美術館蔵
横山 操 「雪原」──────────────────────佐久市立近代美術館蔵
現代画家の描いた秋冬431選〈カラー〉
●物故43選(編集部選・解説付)
●日本画161選(自選・エッセイ付)
●洋画227選(自選・エッセイ付)

本書200頁:平山郁夫「秋天東寺五重塔」 363頁:奥谷博「霧り渡る」
現代書に見る四季68選〈カラー〉
●現代書家 I 物故19選(編集部選・解説付)
●現代書家 II 49選(自選・エッセイ付)

本書611頁:手島右卿「蒼海」 628頁:杉岡華邨「浜の月」
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