日本画

     
   

今、墨という画材にますます魅せられ、深い愛着を感じている。濃墨が水にのって滲み広がり、乾き生まれる撥墨の誕生に時として有頂天になる事がある。深淵を覗き込むような漆墨の底知れない不気味さの中、長くアトリエで眺めているナマズを泳がせてみようとの想いでこの仕事が始まりました。


新薬師寺十二神将の宮毘羅である。髪を逆立て、まるで現代のパンクバンドでも観るようだ。この神将の躍動感にはいつもながら見入ってしまう。墨色の堂内に並ぶ国宝の眼の光。天平の塑像が私の前に生き返り睨み付ける。

日本画の画材の中でも墨ほど魅力的でまたこんなに難しいものはないのだが、また墨色の魅惑に負け、龍を描いた。「蔵頭露尾」という言葉があります。巨大で神秘的な全貌は窺い知れず、頭が覗いたと思うとたちまち身体は暗雲にまぎれる。墨との付合いそのものであります。

   

 
 

土屋禮一

TSUCHIYA REIICHI

日本藝術院会員、日展副理事長、金沢美術工芸大学名誉教授
 
1946年
1967年
1969年
1980年
1985年
1990年
2005年
2007年
2009年
岐阜県生まれ
武蔵野美術大学卒業、加藤東一に師事
日展特選・白寿賞受賞(76年特選)
日展会員となる
日展会員賞受賞
MOA岡田茂吉賞優秀賞受賞 
日展文部科学大臣賞受賞
日本藝術院賞受賞
日本藝術院会員となる

 
     

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