アートフェア東京はどう変わってきたのか―「社会にコミットするアートフェア」(2)

2015年03月09日 17:13 カテゴリ:その他ページ

 

 

■アーティスティック・プラクティス―あえて“ど琳派”にせず琳派を見せる

―まず「琳派はポップ/ポップは琳派」についてお伺いします。参加作家には金氏徹平や蜷川実花など現代アートの作家が並びますが、「琳派」の作品は出品しませんね?これにはどういう狙いがあるのでしょうか?(※参加作家:金氏徹平/コシノジュンコ/しりあがり寿/染谷聡/中島克子/蜷川実花/山口藍/山本太郎/矢柳剛)

 

金島:今年は琳派誕生400年。京都を中心に琳派に関する展覧会などが数多くありますが、その流れを東京にも持ち込むべく企画を立てました。当初は完全な展覧会形式での企画も考えましたが、AFTはあくまでアートフェアですので、ビジネス的な観点や売買のバランスが取れる内容を考慮し、琳派を切り口とした現代の表現にのみ注目しようと考えたのです。

 

山本太郎「紅白紅白梅図屏風」 ©Taro YAMAMOTO courtesy of imura art gallery

山本太郎「紅白紅白梅図屏風」
©Taro YAMAMOTO courtesy of imura art gallery

 

初めの段階ではいわゆる「琳派の名品」の展示も検討しましたが、あえて“ど琳派”にしないで、それを入り口に日本の現代表現を見つけていこうと。(もう一つの柱である)ヴェネツィア・ビエンナーレの企画展が海外からの視点で日本の美術を見せるのに対し、“より日本的な”表現を意識しながら今回のようなラインナップになりました。今回参加頂けるどの作家も琳派の表現には何かしらインスパイアされており、そういった観点から日本の現代アートを紹介するのがこの企画です。

 

 

―キュレーションについては誰かが関わっているのでしょうか?

 

金島:コミッティーからの意見や出展ギャラリーからの提案などに基づきながら調整してきたのでキュレーターはいません。ただ平面、立体、写真などなるべく多様なメディアの作品の表現を見せていこうと考えながら構成されています。

 

しりあがり寿「ぞんざいな王国」 展覧会風景 NODA CONTEMPORAY

しりあがり寿「ぞんざいな王国」 展覧会風景
NODA CONTEMPORAY

 

金氏徹平「Ghost in the Liquid Room (lenticular) #8」 copyright the artist courtesy ShugoArts

金氏徹平「Ghost in the Liquid Room (lenticular) #8」
copyright the artist courtesy ShugoArts

 

―先ほども少しお話が出ましたが、もう一つの大きな柱である「ヴェネツィアが見た日本の現代アート」について教えてください。このセクションは「多様性の現在」、そして「「もの派」から辿る20世紀」という2つから成り立っています。「もの派」については現在東京都現代美術館で菅木志雄展が開催されるなど、近年国内外問わず注目が高まっておりタイムリーかなとも思いますが、「ヴェネツィア・ビエンナーレ」自体をテーマとして取り上げた意図は何でしょうか?(※参加作家:塩田千春/束芋/宮島達男/森万里子/森村泰昌/米田知子、遠藤利克/小清水漸/菅木志雄/戸谷成雄/村岡三郎)

 

金島:日本の現代アートを多角的に紹介するにあたり、琳派が日本的な文脈であるのに対し、国際的な視点での尺度を何とすべきかという議論がありました。その中で世界で最も影響力のある国際展であるヴェネツィア・ビエンナーレを入り口にして紹介していこうと。「多様性の中の現在」では日本館に限らず、若手グループ展「アペルト」部門に出展した作家もギャラリーからの推薦で展示作品を構成しています。「「もの派」から辿る20世紀」は「もの派」作家だけではなく、その前後に位置づけられる物質(マテリアル)に立脚した作品が揃います。

 

(左)塩田千春「Zustand des Seins (Kinderkleid) / State of Being (Children’s Dress)」 ©Chiharu Shiota photo by Tetsuo Ito Courtesy of KENJI TAKI GALLERY (右)森村泰昌「セルフポートレイト/ 白いマリリン」 copyright the artist courtesy ShugoArts

(左)塩田千春「Zustand des Seins (Kinderkleid) / State of Being (Children’s Dress)」
©Chiharu Shiota photo by Tetsuo Ito Courtesy of KENJI TAKI GALLERY
(右)森村泰昌「セルフポートレイト/ 白いマリリン」
copyright the artist courtesy ShugoArts

 

 

―今回のアーティスティック・プラクティスは作品が買えるんですか?

 

金島:ほぼ購入できます。ですので「琳派」や「ヴェネツィア・ビエンナーレ」といった観点は購入の判断基準の一つとしても有効かと考えています。

 

 

―国内外問わず、多くの来場者にとって多様な日本の美術を見ることができるという点では面白いでしょうね。

 

金島:アートの一つの見方として重要なのは「文脈」ですが、フェアのギャラリーブース単体ではその流れを見てるのがなかなか難しくもあります。出展ギャラリーに協力いただきながら私たち自らが文脈を整理し見せていくことができればよいですね。

 

菅木志雄「離空」 ©Kishio Suga photo by Yoshitaka Uchida Courtesy of Tomio Koyama Gallery

菅木志雄「離空」
©Kishio Suga photo by Yoshitaka Uchida Courtesy of Tomio Koyama Gallery

 

 

■フェアの概念にとらわれず、社会の中でできることは何かというのを考えていきたい

―昨年から始まったAMIT(Art, Media and I, Tokyo)が今回は国際フォーラムの外で行われます。こういった街を巻き込むようなサテライト企画は面白いですね。

 

金島:その視点は常に意識してきました。時間はかかりましたが、ようやく多くの方々の協力の中で実現してきたなという感じです。東京一体がフェアやオープニングなどでアート一色になる「東京アートウィーク」という企画を様々な団体に相談したこともありましたが、やはりそれぞれの組織にはそれぞれのロジックがあるのでなかなか揃わない。結果として香港やシンガポールに先を越されてしまいました(笑)

 

 

―仰るようにアジア各国では行政主導でアートを盛り上げていこうという動きが顕著ですが、そんな中でAFTの今後の展望について金島さんはどうお考えですか?

 

金島:日本全体で美術をコレクションするという意識は高まってきていると思うんですね。それには日本全国で行われるアートイベントなどによって、社会とアートがより密接になってきたことが要因としてあると。そういう中で「作品を実際に買って所有してみよう」という意識をさらに高めていくのが私たちの役割であると思います。また2020年の東京五輪が決まり、今後国家レベルでの美術に対する取り組みが増えていく中で、それを意識しながらAFTがフェアの概念にとらわれず、社会の中でできることは何かというのを考えていくべきだと思っています。

 

 

―社会により深くコミットしていくと。

 

金島:そうですね。マーケットが広がればそれだけ私たち美術に携わる者ができることも増えます。その間口を広げていく努力は続けていきたいですね。

 

 

―国内のアートマーケットは着実に成長しているという印象でしょうか?

金島:(マーケットにコミットする)機会や議論というのは増えていると思います。国際化していくことが良しとされ、ドメスティックにとどまることは高く評価されない、という時代もありましたが、今はだいぶ違う。それは震災を経てアートの役割が変わる中で、上手く日本人の意識の中でのバランスが取れるようになってきたのかなと思います。今回のアーティスティック・プラクティスでは完全に日本にフォーカスしていますが、以前だったら「このグローバルな時代に何をやってるんだ」と言われたかもしれず、今だからこそ違和感がないのかもしれません。その理由の一つには、“バーゼル・ヒエラルキー”が変わりつつあるとも思います。かつては海外からの出展ギャラリーの増減がフェアのクオリティーの指標と言われましたが、作品そのものが良いことが重要であって、日本美術が好きな海外の方が所有してくれる可能性もある。そういうことが普通に話し合える時代になったと感じています。

 

 

―例えばアートバーゼル香港は行こうと思えばすぐに行ける。そういう“近さ”を味方に付けることもできますね。

 

金島:そうですね。バーゼルで買いたい人はスイスや香港に行くでしょう。ただし、AFTは東京でしか見られないものがたくさん揃っています。コレクターもそこしかにない作品との出会いやそれを支える土俵を求め始めています。(バーゼルなどの)グローバルスタンダードがあるからこそ、違うものが求められる時代が来る。その中で“東京でしか見られないもの”というのがこれから国際性を持つのではないでしょうか

 

 

―「アートバーゼル東京」を目指す必要性はないと。

 

金島:現実的に難しいですし、それを目指すと独自の強い文脈を持つ日本では破たんしてしまうと思います(笑)。文脈も文化も欧米の価値観とは違いますから。香港がここまで発展し、バーゼルが成立したのは近代化してきたプロセスが短く、しがらみも少なかったからだと思いますが、日本はそうシンプルにはいきません。色々な組織や団体であったり過去の経緯がありますが、それは悪いことではなくて、「あれもこれもある」という多様性こそが日本のアートシーンなのです。

 

 

―海外のシステムを輸入してこようとすると無理が生じる…。

 

金島:少し前までは私も含め多くの現代アート関係者がそれをしよう努力していたと思いますが、今はかなり違ってきている実感があります。だからこそこれからは日本人一人一人が自分たちにとって必要なアート、あるいはマーケットのことを考え自ら創り上げていく時代が来ていると強く思います。

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かねしま・たかひろ

1977年東京都生まれ。アートフェア東京プログラム・ディレクター。2002年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了、ノキア社、株式会社東芝、東京画廊+BTAPを経て、08年4月よりZAIMにてFEC(ファーイースト・コンテンポラリーズ)の活動を開始。11年から14年までアートフェア東京エグゼクティブ・ディレクター。

 

アートフェア東京2015

【会期】2015年3月20日(金)~22日(日)

※ファーストチョイス=3月19日(木) 16:00~18:00、オープニングプレビュー=3月19日(木) 18:00~21:00

【会場】東京国際フォーラム 地下2階 展示ホール

【開場】3月20日=11:00~21:00/21日=11:00~20:00/22日=10:30~17:00(全日入場は閉場30分前まで)

【料金】1-DAYパスポート 当日2,000円(税込)/3-DAYパスポート 当日3,500円

※1月26日(月)より前売り各500円割引で販売

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