[寄稿] 田中 淳:「竣介のアトリエ再見プロジェクト すわっていた場所、つかっていたモノ、すきだったモノ」実現のためのクラウドファンディング

2018年06月07日 13:22 カテゴリ:最新のニュース

 

松本竣介 今は失き創作の場をふたたび――

 

 

1948年6月に、画家松本竣介が36歳の若さで亡くなっています。生前は、無名の青年画家のひとりにすぎなかったにもかかわらず、今日では、その作品は、多くの人に愛されています。

 

卓抜な技巧家でも、先鋭的な理論家でも、情熱的な表現者でもなかったこの画家が、現在これほどまでに親しまれているのは、どういう理由からでしょうか。その問い自体が、実は美術をめぐる今日のわたしたちの問題でもあるのです。理知的でありながら、情愛のこもった作品ひとつひとつには、これこそ「真実」だという輝きがあるからでしょう。

 

今年は画家の没後70年にあたります。また、サラリーマンコレクターであり、当美術館創設者の大川栄二(1924~2008)が、コレクションをはじめるきっかけになったのが松本竣介の作品との出会いでした。大川は、はやい時期から松本竣介の収集をはじめ、この画家の評価を高めることに努めていました。

 

そこで、今年当美術館では、松本竣介の3つの展覧会を企画しています。それだけではなく、展覧会期中の9カ月間にわたり「竣介のアトリエ再見プロジェクト」を計画しています。すでにアトリエは老朽化のため失われています。しかしご遺族によって、作品とともに大切に守られてきたイーゼル、パレット、テーブル、書籍、壺、ペンなど種々のモノがあります。それらを館内にアトリエと同じスペース(約15畳)を設け、当時の様子がうかがわれるように展示します。

 

竣介没後も大切に守られ続けてきた机やペン、原稿、イーゼルやパレットなどを展示。竣介が生きた時代の空気やアトリエの空気を間近に体感する貴重な機会ともなるだろう

 

大川美術館創設者の大川栄二は松本竣介との出会いをきっかけに絵画のコレクションを始めた。同館の大展示室には、代表作《街》をはじめ数多くの竣介作品が常設展示されている

 

これまでの回顧展では、こうした資料類は会場の最後の部屋に、ガラスケース越しにご覧になっていたでしょう。しかし、今回は逆に、まずこうしたアトリエにあったモノを間近にご覧いただき、モノにかこまれながら創作していた画家の姿を想像していただきます。創作の内側ともいうべきところから、作品をご覧いただければと計画しています。

 

このアトリエの「再見」を実現するために、クラウドファンディングによって資金を集めようとしています。ご支援の方法は、Readyforのプロジェクトページ、もしくは大川美術館のホームページにてご案内しています。どうぞ、ご支援のほどよろしくお願いします。

(大川美術館 館長)

 

500万円を目標金額に、7月31日(火)午後11:00まで実施。5,000円から支援可能で、返礼品としてチケットやカタログなどが贈られる

 

【3つの松本竣介企画展】

松本竣介―アトリエの時間:2018年10月13日(土)~12月2日(日)
松本竣介―読書の時間:2019年1月22日(火)~3月24日(日)
開館30周年記念 松本竣介―子どもの時間:2019年4月16日(火)~6月16日(日)

【会場】大川美術館(群馬県桐生市小曾根町3-69)

【TEL】0277-46-3300

【休館】月曜、祝日のとき翌日 ※臨時休館あり

【開館】10:00~17:00(入館は16:30まで)

【料金】一般1,000円 高大生600円 小中生300円

 

【関連リンク】大川美術館
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