【レポート】 「国際博物館の日」シンポジウム開かれる

2014年05月29日 12:46 カテゴリ:最新のニュース

 

世界博物館大会の京都開催に向けて

ミュージアム界のトップ集結 2019年招致への課題に協力

 

今年3月の国際博物館会議(ICOM=イコム)日本委員会(委員長:青木保・国立新美術館長)臨時総会での「5年後の2019年ICOM世界大会を京都に招致」立候補の決議を受け、5月18日、東京六本木の国立新美術館において日本の美術館・博物館のトップが集結し、「国際博物館の日 シンポジウム~世界博物館大会の京都開催に向けて~」が開催された。20年東京五輪開催決定と合わせ、文化の祭典の発信もという関係者の意思表明だ。その道筋と課題が明らかになった。

 

パネル・ディスカッションで発言する建畠氏(左端)ら7人の登壇者

 

この日のプログラムは、銭谷眞美・日本博物館協会会長/東京国立博物館長が主催者を代表して挨拶。来賓として青柳正規・文化庁長官が博物館、美術館の歴史とその役割を振り返りつつ「世界大会招致の成功を念願します」と挨拶した。栗原祐司・ICOM日本委員会委員/東博総務部長による詳しいICOM活動紹介があり、青木氏による基調講演「ICOM大会の日本招致に向けて」が行われた。

 

主催者を代表し、銭谷氏は「世界大会は、1948年以降3年おきに開催される。日本は第2回から毎回参加しているが、未だ大会開催招致はない。既に韓国(ソウル)や中国(上海)では大会開催され、その後の両国における博物館・美術館の大きな発展ぶりを考えると日本でもぜひ開催すべきとの機運が起きています。来年6月頃の2019年開催国決定に向けて準備を進めるべく、本日はそのキックオフ。国内の美術館・博物館トップの方々のお知恵を頂きたい」と語った。

 

基調講演をする青木保・ICOM日本委員会会長

また青木氏は「美術・音楽・文学の芸術3大分野の中で21世紀は美術の時代。美術館はエキサイティングでリラクシングな所です。東博や西美で好きな1点の選択鑑賞が多忙でも可能。いま世界、アジアで“文化力”の時代が訪れている。その高い国が世界的な支持を受け、存在感を示せるのです。その中心にあるのが美術館・博物館ですが、まだまだ世間への周知が足らない。小中学校での教育の重要性を強調したい。イコム世界大会の京都招致に向け、日本に5700余ある美術館・博物館は連携してわが国の存在感を高めていくことが肝要です。それは近隣諸国との平和にも繋がるという強い信念を持ってやっていきたい」と講演した。

 

ディスカッションでは半田昌之・日本博物館協会専務理事をコーディネーターに銭谷氏、建畠晢・全国美術館会議会長(埼玉県立近代美術館長)、酒井忠康・美術館連絡協議会理事長(世田谷美術館長)、林良博・全国科学博物館協議会理事長(国立科学博物館長)、山本茂行・日本動物園水族館協会会長(富山市ファミリーパーク園長)、小林淳一・全国歴史民俗系博物館協議会(江戸東京博物館副館長)が登壇。博物館、美術館系の連合体の主なる組織とされる代表・トップが一堂に揃った。

 

この中で建畠氏は「世界で日本の美術館等の認知度を高めるには例えばルーヴルやMoMAのようなセンター館の存在が必要だ」とし、酒井氏は「六本木3館協力もいいが、地域とは別の“体力”の近い館同士の連携協力も有効」と提言、会場参加者らとの質疑応答もあり日本における博物館の在り方などを巡って活発な議論の場となった。

 

2019年開催地の決定は2015年6月。ICOMパリ本部で世界各国の代表らの投票で決まる。日本以外にも中東2カ国の立候補が予想されている。20年東京オリンピック・パラリンピック開催決定という追い風はあるものの、まだハードルは高いと関係者はみる。多数のアフリカ票の動向がカギを握るともいわれる。

 

「新美術新聞」2014年6月1日号(第1345号)3面より

 


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