【六本木】リー・ミンウェイとその関係展 参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる

2014年09月19日 10:00 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

リー・ミンウェイのプロジェクトを総覧できる初の大規模な個展

 

リー・ミンウェイ《プロジェクト・繕(つくろ)う》2009年
展示風景:ロンバード=フレイド・プロジェクツ、ニューヨーク、2009年
ルディ・ツェン氏蔵 撮影:Anita Kan

 

1990年代後半からさまざまな方法で観客参加型のアートプロジェクトを展開し、数々の国際展に参加してきたリー・ミンウェイ(李明維、台湾出身、ニューヨーク在住、1964年生まれ)。その作品を網羅的に体験できる初めての大規模個展が森美術館で開催される。

 

リー・ミンウェイはこれまでホイットニー美術館(1998年)、ニューヨーク近代美術館(2003年)、ロサンゼルス・カウンティ美術館(2004年)などでの個別プロジェクトから、第5回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(1999年)、第50回ヴェネチア・ビエンナーレ台湾館(2003年)、第10回リヨン・ビエンナーレ(2009年)、第18回シドニー・ビエンナーレ(2012年)といった国際展まで多様な展覧会に参加。日本では東京都現代美術館「ギフト・オブ・ホープ」展(2000-2001年)、森美術館「秘すれば花」展(2005年)で紹介されたほか、資生堂ギャラリー(2012年)、堂島ビエンナーレ(2013年)などでも近作を発表している。

 

リー・ミンウェイ《プロジェクト・繕(つくろ)う》2009年
展示風景:ロンバード=フレイド・プロジェクツ、ニューヨーク、2009年
ルディ・ツェン氏蔵 撮影:Anita Kan

 

観客の参加によって変わっていく展覧会

リーの参加型作品は、ギャラリー内で誰もが参加できるもの、事前に申し込んで参加するもの、抽選に当たった人だけが体験できるもの、アーティストに代わって鑑賞者を迎えるホスト役となるもの、また全くの偶然で参加できるものなど、さまざまなタイプのものがある。アーティストが用意する多様な枠組みに観客が参加することで、作品は活き活きとした輝きを見せ、展覧会は会期中107日間、変わり続ける。

 

リー・ミンウェイ《プロジェクト・手紙をつづる》1998年
展示風景:シカゴ・カルチュラル・センター、2007年
撮影:Anita Kan

 

リー・ミンウェイ《布の追想》2006年
展示風景:資生堂ギャラリー、東京、2012年
撮影:Kevin Ho

 

また今展はリーの制作活動において重要なキーワードである「関係性」や「つながり」を再考するテーマ展でもある。リーの実践の背景にある歴史的、社会的、文化的な文脈を読み解く試みとして、白隠、鈴木大拙、ジョン・ケージ、イヴ・クライン、李禹煥、アラン・カプロー、リクリット・ティラヴァニ、小沢剛、田中功起など他のアーティストの作品や歴史的な作品も「参照作品」として併せて展示される。

 

(左)李禹煥《線より》1976年岩絵具、キャンバス100×80 cm 所蔵:東京オペラシティ アートギャラリー
(右)小沢 剛《ベジタブル・ウェポン―芋煮/福島》2012年 タイプCプリント 36.5×28.6 cm Courtesy: MISA SHIN GALLERY, Tokyo

 

パフォーマンス

会期中には2つのパフォーマンスプログラムを実施。リーが母親を看病した際、シューベルトの歌曲によって、気持ちが元気づけられたことに着想を得て発案された作品《ソニック・ブロッサム》では来場者に対して、これらの歌曲が贈り物として届けられる。開催は予告なしの不定期。またピカソの《ゲルニカ》を砂絵で描いた《砂のゲルニカ》では作品の上を観客が歩く、1日限りのパフォーマンスを展覧会会期半ばに実施。砂絵のイメージは徐々に消失してゆき、この世の無常観を伝える。日時は11月16日(日) 12:00~19:00(正午から日没まで)、会場は森美術館展示室内。

 

 

■リー・ミンウェイとその関係展 参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる

【会期】9月20日(土)~2015年1月4日(日)

【会場】森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)

            TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)

【休館】会期中無休

【開館時間】10:00~22:00(火曜日のみ17:00まで)

※ただし9月23日、12月23日の火曜日は22:00まで、入館はそれぞれ閉館30分前まで

【料金】一般1500円 学生(高校・大学生)1000円 子供(4歳~中学生)500円

※上記の入館料で同時開催の「MAMプロジェクト022:ヤコブ・キルケゴール」展、展望台 東京シティビューにも入館可

【関連リンク】森美術館

 

■同時開催「MAM PROJECT 022 ヤコブ・キルケゴール」

世界各国の才能豊かなアーティストを応援するプロジェクト「MAM PROJECT」の第22弾となる展覧会ではヤコブ・キルケゴール(1975年、デンマーク生まれ)を紹介。人間の聴覚をテーマに作品を制作しているヤコブ・キルケゴールは音や振動をその場所のエネルギーとして捉え、間欠泉、砂漠、氷山、チェルノブイリの廃墟、人間の耳の内膜など、通常では踏み入ることのできない場所の音を顕在化し、その体感を通して世界を捉え直すことを促す。今展のための新作《スティグマ(徴(しるし))》は、福島の自然を主題としたサウンド・ビデオ・インスタレーション。美しい自然の風景は、その場所で録音と再生を繰り返すことで増幅された音の効果と、「フクシマ」の記憶を伴い、私たちが抱く自然観に揺さぶりをかける。

 

ヤコブ・キルケゴール《スティグマ(徴(しるし))》2014年
サウンド・ビデオ・インスタレーション 33分12秒

 

 


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