洋画

     
   
山を背景に民家になじんで、すっくと立って凛とした姿を見せる火の見やぐらの鉄塔は、山間部の集落風景に溶け込み存在感を示してきた。<br />
しかし、地域住民の防災機能としての役割を終えて撤去が進む。名残を惜しみながら、そして、忘れ去られてゆく。<br />
地域に根づいてきた昭和の遺産といえる火の見やぐらの風情を感じさせる景は、おのずと気持ちを包み込んで制作意欲を刺激する。
静物画のモチーフといえば果物が定番であり、おのずとセザンヌの言葉「リンゴでパリを驚かせたい」が思い浮かぶ。<br />
当作は、通常の静物画が表す体系に基づき、白いテーブルクロスの上に二系色の異なるリンゴ、それに背景の黒色系との対照的な色調の配分でとりまとめ、画面にメリハリを利かせて精彩感をおびている状態をめざした。
伊豆半島に位置する城ヶ崎海岸で、ゴツゴツとした岩場を描く。同地の案内板に「約4000年前に噴火したとき溶岩が海に流れ出し、波風による浸食作用で削られて出来た約9キロメートルにわたる海岸は、各種の様相を呈する自然が造成した景観」、という主旨の説明が記されていた。
パリの街は美しい。いかにすればこのような重厚にして風情や憂い等も醸し出す都会的な街が造れたのか。 俯瞰すれば、高台から街並みへと続く坂道と階段、煙を吐かない煙突の趣、屋根はその下に展開する様々な人生や生活の哀歓を物語る。ノスタルジアが息づくシックな佇まいのこの街は、住む人の暮らしと協調の上に育まれたと言える。

   

 
 

尾崎重春

OZAKI SHIGEHARU

1941年岐阜県生まれ。現、東京・港区住。
武蔵野美術大学を卒業、渡仏。帰国後、京都で10年間、油絵制作とともに描絵(かきえ)に携わる。京都アンデパンダン展に出品(86年第26回まで出品を重ねる)。油絵と描絵の個展をパリ(3回)、ハンブルク(3回)、ニューヨーク(3回)で催す。上野の森美術館大賞展・日仏現代美術展で受賞。
著書に『描絵の傳書』(98年)、『描絵の系譜』(2007年)、『描絵の手控帖』(08年)、『京都アンデパンダン展:全・2回+31回を概観』(11年)、『筆聖 宮内得應 筆巡りの旅』(13年)がある。

HP 尾崎重春の断面

【工芸】

白地牡丹模様描絵訪問着(裾部分)
白地牡丹模様描絵ドレス
牡丹模様描絵振袖
白地牡丹模様描絵訪問着(裾部分)

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