日本画

     
   

さくら……それもしだれ桜といえば、私は京都平安神宮の紅枝垂桜を見た時、唯々綺麗と感嘆の声をあげ、その絢爛さに酔いしれてしまった事を思い出します。しかし私が描きました桜花は八王子の農家の庭に、300年の年輪を数える桜樹ですが、老木に一重の清楚な花を静かに咲かせておりました。とろりとした春の日が山端に落ちようとする一瞬、淡い夕闇の中にたおやかな枝ぶりを、そよ風にまかせておりました。酔客もおらす、騒ぎも聞こえず、静かに暮れる春の宵の中に、桜と私だけが向きあいまわりの空気までが物柔らかかく、夢のような幸せなひと時でした。


多摩の動物園の近くに住んでおります私が想い出しますのは、30年程前に孔雀が動物園の近くの畑で遊んでいるのを見て驚きました事です。その頃はインド孔雀の数も多く、縄張り争いに敗けたものが、園外で遊んでいたそうです。雌雄で畑に遊んで卵を生んでいってしまう事もあったと聞きました。庭に来てしまい動物園に通知しますと「とうぞお飼い下さい」と冗談に云われて、孔雀小屋を建てたら自分達の寝る処も無くなってしまうわね等と笑い話になりました。今では交通量も増え、畑もなくなり、孔雀も「園外は御免被る」との事です。

   

 
 

金子桃媛

KANEKO TOEN

 
1932年
 
1984年
1985年
1986年
1994年

東京生まれ
片桐白登に師事。
日本南画院展日本南画院賞
日本南画院展文芸賞受賞
日本南画院展文化賞受賞
国際都市ロンドン美術展コベント・ガーデン大賞受賞
国際伝統美術カリフォルニア展ロサンジェルス市長賞

 
     

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