注目浴びる「個人コレクション」 若手実業家コレクターの台頭〈4〉

2016年02月09日 22:26 カテゴリ:その他ページ

 

「岡山芸術交流」で新たな芸術祭目指す―石川コレクション

 

ファッションブランド earth music&ecology やTHOM BROWNEなどを展開する株式会社クロスカンパニー代表取締役社長の石川康晴氏(1970年生まれ)。氏の「石川コレクション」が一躍注目を集めたのは2014年に東京オペラシティ アートギャラリーで開催された「幸福はぼくを見つけてくれるかな?」だろう。同展ではライアン・ガンダーやリアム・ギリック、ピエール・ユイグなど10作家を紹介、石川コレクションの現代性を覗かせた。

 

また同年11月には岡山市内でアートプロジェクト「Imagineering OKAYAMA ART PROJECT」を開催。アートアドバイザーとしてTARO NASU代表の那須太郎氏を迎え、ダグラス・ゴードン、マーティン・クリード、サイモン・フジワラ、フィリップ・パレーノら12作家の作品を岡山市内に散りばめて展示。約11万人の来場者を集め、現代アートで岡山市を盛り上げることに成功している。

 

そんな石川氏は2014年に公益財団法人石川文化振興財団を設立。自身が理事長に就任するとともに、評議員にはコレクターとして知られる株式会社大林組代表取締役会長の大林剛郎氏や森美術館理事長の森佳子氏らが名を連ねている。文化と経済、両面からの支援を通じて地元である岡山の発展に寄与することを目指す石川氏は、前述の「Imagineering OKAYAMA ART PROJECT」を発展させるかたちで、今年10月から新たな国際芸術祭「岡山芸術交流 Okayama Art Summit 2016」をスタートさせる。

 

アーティスティック・ディレクターに迎えたのは自身もコレクションするアーティストのリアム・ギリック。参加アーティストにはサイモン・フジワラ、ライアン・ガンダー、ジョーン・ジョナス、眞島竜男、ドミニク・ゴンザレス=フォスター、リクリット・ティラヴァーニャなど世界の第一線で活動する現代アーティストらが名を連ねる。コレクターとしての日は浅いという石川氏だが、コレクションを地元の活性化につなげたいという強い意志と、実行力の高さにはこれからも注目していきたい。

 

「岡山芸術交流」記者会見での一コマ。中央に石川康晴氏。

 

現在東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「サイモン・フジワラ ホワイトデー」にも石川コレクションから作品が出品されている。写真はサイモン・フジワラ《レベッカ》。

 

ここで紹介した3人の新進コレクターはそれぞれ財団の設立やオフィスとアートの関係を問う活動など、新たな世代として自身のコレクションをそれぞれのかたちで活用している。この中から今後、コレクションを基にした美術館が誕生する可能性も十分にあるだろう。作品を次代に引き継ぐ役割を負った若きコレクターたちから目が離せない。(橋爪勇介)

 

 


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