【インタビュー】17th DOMANI・明日展―岩崎貴宏

2014年12月25日 17:00 カテゴリ:その他ページ

 

 

木製模型を水面で反射させたような「リフレクション・モデル」と、雑巾などの糸を使い精緻な建築物を構築する「アウト・オブ・ディスオーダー」。岩崎貴宏を代表するこの2つのシリーズはどのように生まれたのか。

 

2007年度在外研修ではイギリスへ。「イギリスには東急ハンズのような便利な店がない。そこで身近にあった日用品を素材として使ったのがアウト・オブ・ディスオーダーの始まり」だった。

 

同シリーズに見られるモチーフは無機質な鉄骨の構造物。「(広島生まれの私にとって)ワイヤーフレームは原爆ドームをはじめとする遺構を連想させるもの。鉄骨がむき出しの状態は建築ではなく廃墟としてシンボライズされる。それは科学が夢見た工業化の終焉でもあり、20世紀の惨禍とも関係深い。敗戦、高度成長期以降に生まれた世代として重要」とその理由を話す。

 

「アウト・オブ・ディスオーダー(川崎シリーズ)」2014年 川崎市市民ミュージアム蔵 coutesy of the Artist and ARATANIURANO

 

一方、在外研修以前に生み出された「リフレクション・モデル・シリーズ」では金閣寺、銀閣寺、瑠璃光寺という“色”を持つモチーフを発表。「創建当時の人々が生きたディストピア(現世)と、彼らが思い描いたユートピア(来世)の融合体」と語る同作は宙に浮き、見えない水面を会場に出現させる。

 

一見異なる2つのシリーズだがそこには「圧縮された空間をどう展開させるか」という岩崎の興味が詰め込まれている。「一人の作家が異なる表現の作品を一つの空間で、同時代に展示する。そこが面白い」と語る今展。広島、イギリスと異なる舞台で異なるシリーズが生まれたが、「次のステージではまた違うものが混ざっていくでしょう。表現を変えながらミックスしていくことが楽しい」。今回は岩崎の今を見据え、未来に想いを馳せる好機に違いない。

 

「リフレクション・モデル・シリーズ」展示風景

 

[プロフィール]岩崎貴宏

1975年広島県生まれ。2003年広島市立大学芸術学研究科博士後期過程修了。05年エジンバラ・カレッジ・オブ・アート大学院修了。平成23年度ポーラ美術振興財団在外研修員。主な個展に「メタフレーズ・シーナリー」(ARATANIURANO、12年)、主なグループ展に「ヨコハマトリエンナーレ2011」(横浜美術館)など。

 

 

 

 

 


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