色鮮やかに語りかける 熱く純粋な思い――没後100年村山槐多展:小笠原 正

2019年07月19日 16:00 カテゴリ:最新のニュース

 

《雲湧く山》1911年 個人蔵

《雲湧く山》1911年 個人蔵

 

本年、22歳で夭折した村山槐多の没後100年を迎えた。

 

槐多と言えば高村光太郎が「火だるま槐多」と比喩したように、短くも鮮烈な画家人生を送った人物として知られているが、昨年、100点を超える数多くの未公開作品が美術史家・村松和明氏(おかざき世界子ども美術博物館副館長代行)により発見された。その大半は槐多が京都府立一中時代に描いた風景画であり、これまでの槐多像を一新するものであった。それは、緻密に計算され、対象を的確に捉える自然描写の基礎を、京都在住時代に十分身に着けていたことを示す資料だったからである。これまで知られていたデフォルメや粗いタッチで描かれた少年時代の槐多作品とは全く趣の異なる画業の姿が浮かび上がってきた。
 

《カンナ》1915年 個人 蔵

《カンナ》1915年 個人蔵

11点の油彩画も新たに見つかり、従兄の山本鼎に画家への道を勧められてから間もなくの油彩《雲湧く山》や、槐多お気に入りの油絵具ガランスの鮮やかな《カンナ》、彼の画業の一つの到達点ともいうべき《房州風景》など、現存数の少ない油彩の優品も見逃せない。これらの大半が100年もの間、槐多本人から作品を託された当時の同級生など関係者の家で今日まで大切に保管されてきたことに敬意を表さずにはいられない。これにより槐多の全貌が明らかになった意義は大きい。

 

本展ではアニマリズムの代表作《尿する裸僧》や、江戸川乱歩が愛蔵した《二少年図》、タテ1・8×ヨコ2・4メートルの水彩の大作《日曜の遊び》など、槐多の代表的な作品を含め、その画業全体を振り返る。

 

詩作にも優れた才能を発揮した槐多だが、本展には大人はもとより将来の夢や進路に思いを巡らす同世代の高校生や大学生などの若者たちにもぜひ足を運んでいただきたい。

 

「未来へ行け、未来へ行け。未来には恥がある、悲哀もある、失敗もある。苦痛もある、しかし生命がある、未来の生命へ行け」――17歳の彼はそう謳い上げた。22年の短い生涯を駆け抜けた青年画家・村山槐多の熱く純粋な思いは、時代を経た現代の若者たちにも色鮮やかに語りかけるはずだ。

(上田市立美術館 学芸員)

 

《房州風景》1917年 個人蔵

《房州風景》1917年 個人蔵

 

【展覧会】没後100年 村山槐多展 ―驚きの新発見作品を一挙公開―
【会期】第1期:2019年7月27日(土)~8月12日(月)
    第2期:2019年8月14日(水)~9月1日(日)
    ※第1期・第2期で作品の入れ替え有り

【会場】上田市立美術館(長野県上田市天神3-15-15)
【TEL】0268-27-2300
【開館】9:00~17:00(最終入場は16:30まで)
【休館】火曜
【料金】一般500円、高校・大学生400円、小・中学生300円

 

【関連リンク】上田市立美術館

 

【イベント情報】

◇ 対談「村山槐多の生涯と天才の秘密―新発見の作品をめぐって―」
100点を超える新発見作品を通して村山槐多の実像に迫る。
日時/2019年7月27日(土)13:30~15:00
講師/村松和明(美術史家、おかざき世界子ども美術博物館副館長代行)
   窪島誠一郎(作家、信濃デッサン館・無言館館主)

会場/1階市民アトリエ・ギャラリー
参加費/無料
定員/先着80名
申込方法/7月20日(土)・21日(日)美術館まで要電話申込。(定員になり次第締切)

 

◇ 夏休みおしゃべり鑑賞会
「何を描いたんだろう?」「これはどんな場面?」そんな感想を学芸員とおしゃべりしながら鑑賞。
日時/2019年8月11日(日) 17:30~18:30
会場/2階展示室
参加費/小・中学生300円(一般500円)
対象/小・中学生(保護者の観覧可)
定員/先着10名
申込方法/8月3日(土)・4日(日)美術館まで要電話申込。(定員になり次第締切)

 

◇ ギャラリートーク
初公開作品の発見に立ち会った村松和明氏による作品解説。
日時/第1回 2019年8月10日(土)18:00~19:30
   第2回 2019年8月24日(土)18:00~19:30

会場/2階展示室
参加費/一般500円、高校・大学生400円、小・中学生300円
定員/各回先着30名
申込方法/8月3日(土)・4日(日)美術館まで要電話申込。(定員になり次第締切)

 


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