白と黒、生と死のあわいを描く――八島正明が京都で個展開催

2019年04月15日 10:00 カテゴリ:最新のニュース

 

八島正明《面影》90.9×72.7cm 油彩

八島正明《面影》90.9×72.7cm 油彩

 

京都・ギャラリー恵風の開廊17周年企画として、4月16日より八島正明展が開催される。

 

八島正明(1936年三重県生まれ)は針を使ったスクラッチ技法で単彩画を描き、75年の第18回安井賞受賞や各館への作品収蔵など、高い評価を受けている。

 

今回の展覧会で、作家は原点に立ち返る。学生時代に日本史を専攻していた八島が卒業論文のテーマに選んだのは「平田篤胤」だった。「死者の魂は“あの世”に行くわけではなく、我々の周りに留まって、現世を見守っている」という幽冥論を唱えた平田。無意識の内八島の作品にもあらわれていたこの思想は、今展でより明確に画面に押し出される。

 

これまで八島は、広島の原爆投下で被爆した人の影が石段に焼きついた「人影の石」や、幼くして亡くなった自らの妹をモチーフに作品を制作してきた。人間の生きていた頃の周辺や痕跡を描くことで、その存在へ近づこうとしてきた。以前の作品にも平田の幽冥論のような考え方は内包されていたが、再度そこに焦点を当て、世界観を一層深化させた。

 

掲出作の《面影》は自身が近年経験した近親者の死が創作の源泉となる。八島はその亡くなった当人を描かずして、彼らへの想いや残された者の哀情を表現し、鑑賞者に訴えかける。大事な人をなくす経験は、誰にでもある。八島の作品はその時に溢れてくる感情を鑑賞者に想起させ、目を離せなくさせる。

 

八島の呈する黒白のあわいに迷い込み、足を止め、言葉にならない感情の波に揺蕩ってみてはどうだろう。それまで気づくことのなかった身の回りに漂う魂を、感じ取ることもあるかもしれない。

 

八島正明《面影》90.9×72.7cm 油彩

八島正明《面影》90.9×72.7cm 油彩

 

【展覧会】八島正明展「死者は死なず」

【会期】2019年4月16日(火)~21日(日)

【会場】ギャラリー恵風(京都府京都市左京区丸太町通東大路東入ル南側)

【TEL】075-771-1011

【開館】12:00~19:00(最終日は18:00まで)

【休館】会期中無休

【料金】無料

 

【関連リンク】ギャラリー恵風
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