「滋賀県立近代美術館所蔵 小倉遊亀 絵筆にこめた愛」―三つの“愛”を切り口に画業の全貌に迫る:荒井直美

2018年04月12日 11:03 カテゴリ:最新のニュース

 

 

パーマネントヘア、大胆に足を組む浴衣姿の彼女の傍らには、レースのかかったテーブルに切子の花瓶が置かれている。丹念に描かれた小道具は主の繊細な心を映すかのようだ。小倉遊亀の《娘》は、いわゆる美人画とは一線を画す、自由な女性の時代の到来を告げている。

 

上村松園に次ぐ女性日本画家のパイオニア、院展初の女性同人――小倉遊亀の画業にはそんな言葉がついて回る。が、その重みは、現代のわれわれが想像する以上のものであったろう。

 

大陸に夢を追って父が去り、母と二人で暮らした少女時代。教職に就き、病身の母を養いながら絵に向かう二足の草鞋生活。新潟出身の禅徒小倉鉄樹に巡り合い、30歳の年齢差を越えて結婚、養子に迎えた長男と、その結婚……。苦難とはうらはらに、西洋の絵画にも貪欲に学び、のびやかな日本画を創造していった。

 

本展では、故郷の滋賀県立近代美術館の協力を得て50点あまりの作品を展示する。敬愛する師安田靫彦の影響下に独自の菩薩像に至る線描、遺愛の陶磁器とともに並ぶ静物画の豊かな色彩、そして家族をはじめとした人物表現を、三つの愛の姿として構成した。

 

105歳で亡くなるその年まで絵筆を執ることができたのは、この家族の存在があったからにほかならない。小倉遊亀という一人の女性の生き様、それを支えた家族のありようは、今日的な問いとしてわれわれに迫ることだろう。

 

(新潟市美術館 学芸員)

 

 

 

 

 

【展覧会】滋賀県立近代美術館所蔵 小倉遊亀 絵筆にこめた愛

【会期】2018年4月14日(土)~6月10日(日)

【会場】新潟市美術館(新潟市中央区西大畑町5191-9)

【TEL】025-223-1622

【休館】月曜、ただし4月30日(月・休)は開館

【開館】9:30~18:00(観覧券の販売は17:30まで)

【料金】一般1,000円 大学生・高校生800円 中学生以下無料

 

主な関連イベント
■記念講演「小倉遊亀の生涯と画業」
【講師】國賀由美子(大谷大学文学部歴史学科教授〔日本絵画史〕、元滋賀県立近代美術館専門学芸員)
【日時】5月13日(日) 14:00~15:30
【会場】2階講堂
【料金】無料(事前申込不要・先着100名)

 

■ワークショップ「日本画に親しむ~小倉遊亀の絵筆に迫ろう」
【講師】永吉秀司(新潟大学教育学部准教授、日本美術院院友・地域連携教育プログラム委員)
【日時】5月27日(日) 13:30~16:30
【会場】2階実習室+企画展示室
【対象】一般(高校生以上)
【申込】往復はがきで、①参加者全員の氏名②年齢③性別④代表者電話番号⑤代表者住所⑥「日本画」を記入のうえ、美術館へ送付のこと(はがき1枚につき2名まで)。応募多数の場合は抽選。※締切:5月10日(木)必着
【料金】1,000円

 

■ギャラリートーク(同館学芸員による解説)
【日時】4月22日(日)、5月20日(日)、6月3日(日) 各日14:00から(30分程度)
【会場】企画展示室
【料金】無料(事前申込不要・要当日観覧券)

 

【関連リンク】新潟市美術館

 


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